(冬の話)
冬に結婚式を挙げます、という知らせを夏にもらった。自分の気持ちには整理をつけたと思っていたが、やはり長年抱えていた思いとはなかなか決別できなかったらしい。
卒業して数年。4人は散らばってしまったが、時たま連絡を取り合っていた。
卒業した後もあの2人は続いていたのだろう。
カランカランと来店を告げるベルが鳴り、店員がいらっしゃいませと声をかける。ツレが、という返答が聞こえこちらへ近づいてくる気配を感じた。
「マコ」
「よぉーク、ロォ……?」
名前を呼ばれ顔をあげ酷く驚いた。
目の前に立っている女は、確かに自分の待ち人であったが、女ではなかったはずだ。
いや、厳密には女であったが女でないと、言っていた女、男…あー!!ややこしい!!1人心の中でキレる。
「えっどーいう変化ァ?」
「どういう変化やろうなぁ」
和服ばかり着ていた昔とは違い、落ち着いた感じのワンピースを着たクロは肩あたりまで伸びた髪を耳にかける。
「いや、ほんと。驚くから事前に言ってくれる?心臓出るかと思ったァ」
「なんでいちいち報告せなあきまへんの。面倒やわ」
バッサリ切り捨てるのは変わっていないらしい。
「あんまり思い出話に付き合う気はないで」
紅茶で、と店員に頼む彼女は面倒くさそうにため息を吐いた。
「それでも来てくれるあたりクロってや〜さしぃ〜」
「帰ろうか?」
「わ〜〜ごめんってェ」
この友には学生時代に随分弱音を吐いたものだ。
『僕が女の子だったらなんか違ってたのかなァ』
『壊したくないよ僕は。居心地がいいんだァこの4人はさ〜。だから言わないでおくのぉ。男に言われても嬉しくないだろうしィ』
『…でも良と出会ったのは僕が先だったんだけどねェ』
とかなんとか。色々。クロが覚えてるかはわからない。ヘエ、とかハア、とか当時の返事は大体適当だった。
それでも特に何も言わずに聞いてくれたに酷く救われたものだ。
「友人代表スピーチ頼まれたんだけどォ」
「いや、あの2人馬鹿やろ。自分もハルに頼まれたんやけど話だだかぶりやんけ」
「だからァ何書くのか聞こうと思って?」
大好きだった友人たちは、結婚する。
2人が幸せになることはこの上なく嬉しいものであり、心の底から祝いたいものだ。
大丈夫、笑える。祝福できる。
思わずカップを握る手を強める。
「…断ってええんちゃいます?」
「えぇ?」
静かにその様を見ていたクロは、持ってこられた紅茶に口をつけながら言った。
「や、無理でしょ〜断る理由もないし」
「なんとでも言えるやろ」
「なーぁにぃ。どしたの。めっちゃ口挟んでくるじゃん?」
当時聞くだけのスタンスを貫いていたクロが何かを提案してきたのは初めてだった。
「…辛い思いせんでも、ええやんか」
「やっぱクロはいい子だなぁ」
「クソ腹たつ」
「短気かよ」
う〜んと少し唸りながらケーキを一口放り込む。
「や、行くよ。今度こそきっぱりはっきり別れを告げないとね。や〜〜流石に晴れ姿みたら諦めもつくでしょ」
あっはは、と笑ってみせるとほんまアホ。とクロは呟いた。
おめでとう、親友たち
(僕は頭いい方だよ〜)
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