(今、幸せだよ)
墓の前で静かに手をあわせる。横にいる子供たちも、ならって手をあわせていた。
「突然お墓参りに行くって言ったからびっくりしちゃったよ」
お義父さんたちに近状報告できてよかったけど!と妻のシャーロットは笑う。
「悪いな、急に」
「大丈夫!ほら、忍もさつきもおじいちゃん達にこんにちはーってした?」
「した!!じいちゃんたちこん中にいるの!?」
「皐月うるさいわ。お墓の前ではしずかにするべきよ」
きゃっきゃと楽しそうにしている妻と子供たちをみて、思わず目を細める。
(久々に見たな、あの日の夢)
ひどく気分は悪かったが、父さんに呼ばれた気がして、ここに来た。
あれからも、10年以上が過ぎた。
時の流れの早さを実感する。
聖も随分前から一人立ちし、働いてる。
守孝も、私の付き人としてずっと一緒に暮らしていたが、
私の結婚を機に、家を嘉永手独り暮らし。
付き人の仕事は継続中だが、ほかの事もそれなりにできているらしい。
彼女と結婚するとか言っていたから、祝いを持って行ってやらねば。
引き続き近状を報告していると、びゅおっと強めの風が吹く。
お前はどうなんだ、と墓の中にいる人たちが聞いてきた気がした。
前報告した通り、随分年下だが、シャーロットと結婚して、毎日幸せな日々をおくっている。
確か父さんたちも歳の差あったと思い出して、血は争えないなぁと思った。
子供も二人、授かった。大きくなっただろう、この双子も。
忍はますます大人びてきて誰に似たんだか、歳の割には妙に達観しているし、図星をつくのがうまい。
たまに言葉が刺さってうっとしてるのは秘密だぞ。
皐月は元気だ。びっくりするほど。けど姉弟かな、こいつの発言もたまに痛い。
二人とも、すくすく育ってるよ。
(…なあ父さん、私は、あなたのような領主になれただろうか)
民に親しまれ、信頼され、愛される領主に。
あなたの自慢の、息子に。
ぎゅっとあわせた手に思わず力がこもる。
『あぁ、充分だ』
「!!」
『お前はよくやっている。お前は私の誇りだ、景敬。すべて背負わせて悪かった』
「、っっ」
「わっど、どうしたの、景敬さん!??」
急に涙を流している私に驚いたのか、双子とじゃれていたシャーロットが慌てて駆け寄り、ハンカチを差し出してくる。
「あぁ、悪い。大丈夫だ」
それを受け取り、涙をふく。
『お前はいい人たちに囲まれた。心配してくれる人、喧嘩できる人、信頼できる人、尊敬できる人、頼ってくれる人、
そしてなにより、お前を愛し、そばにいて、支えてくれる人』
あの日から変わらない父の声が響く。
『兄さんは、強がりだしな』
『弱音言える人ができてよかったね、お兄さま!』
『私たちは、ずっと見守ってるわ、景敬』
母さんも、敬守も美代も。
『なあ景敬、お前は今、幸せか?』
愛する妻に愛する子供たち。
そして大切なカゾクと佐原の民、友人たち。
今もまだ、俺は多くの人に支えられ、生きている。
(うん、父さん。俺≠ヘ幸せだよ)
あの日流れた涙とは違うものが、次から次へと溢れる。
強がらなくていい、抱え込まなくていい、お互い、支えあっていけばいいんだ。
独りは寂しい、辛い。
けど、俺は独りじゃない。
『幸せに、景敬』
「…あぁ、幸せになるよ、父さん」
今、幸せだよ
(父さん達がよろしくって)
(えっ景敬さん声聞こえたの!??すごいね!?)
(とうちゃんすげーー!!かっけーー!!)
(さすがおとうさま)
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