(ある日の早朝)

ふと、早朝に目が覚めた。
外はまだ少し暗く、隣ではエレノアが静かに寝ていた。

変な時間に目が覚めたものだな、とロロは自身の目を少しこする。
そうして朝ごはんをどうしようかと、ぼんやりと考えていると隣のエレノアが少し身じろいだ。

起こしてしまっただろうか、と慌てて隣の顔を除いたが、薄青の瞳は覗いておらず、普段であれば紅が差されている白い瞼は閉じられたままだった。

少し安堵の息を吐きながら、ロロはその寝顔を見つめる。
紅のない目元を見るのはなかなか貴重なものであった。

(相変わらず睫毛長いなぁ)

と思うも、比べる対象が自分だけなので(他人をまじまじ見るほど興味がない)、女性はこんなものなのかもしれないと思った。

ゆるゆるとロロがエレノアの目元を撫でていると、ゆらりと動いた白い手が、ロロの褐色の手首を掴む。

「オァ、」

流石に撫でるのはまずかったか、と思いながら動きを止めたが、手首を掴んだ腕もそこから動くことはない。
その手の持ち主の瞳も開くことはなく、そのまま数分固まっていた。

どうしようかとロロが悩み始めたところで、その手はロロの手首から指先に方に登ると、そのままその手に被さるようにして、自身の頬に寄せた。

「……なに」

静かな声が耳に届く。

薄青の双眸がゆるりと覗き、ロロを見つめていた。

「エレノア?」
「…ん、」

ごめんね、起こしたね。と言いながらエレノアの指に自身の指を絡めていると、別に。と落ち着いた声が返ってくる。

「…なにを、しているのだろうとは…思ったけど」
「…あれ?起きてた?」
「視線を感じて、ね」

ゆったりと瞬きをするエレノアは、まだ完全に覚醒しきっていないのだろう。所々言葉が途切れる。

「…朝?」
「うん?あぁ、そうだねぇ少し早めの」
「起きる?」
「寝てもいいよ」
「早朝散歩でもすればいいんじゃないの」

きっと風がきもちいい。と段々と明るくなりつつある窓の方をエレノアは見つめた。
少しずつではあるが、鳥の鳴き声も聞こえる。

「じゃあそうしようか」
「うん」

身支度をするために二人は起き上がる。
すっかり目を覚ましたエレノアは、ロロを見て寝癖、と言い笑った。

「あ、おはよう。エレノア」
「うん、おはよう。ロロ」




ある日の早朝
(過ごしやすい季節になったね)
(そうね)

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