兄たちの首筋に浮かぶ星は私には与えられなかったものだ。芸術品の様に美しい顔も、真っ直ぐな意思の強さも。共通点を挙げるとすればこの瞳の色だが、彼等のそれを宝石のエメラルドと呼ぶなら私のは精々絵の具の緑。輝きが違うのだ。どんよりとした私の緑は彼等のように輝くことはない。同じ血が流れている筈なのに何故こうも違うのかと、本当は養子なんじゃないかと考えたことがあった。しかし家には私が産まれたばかりの頃撮ったであろう家族写真があるので、その可能性はほぼないに等しい。いっそ養子であった方が良かった。これほどまでの違いを血のせいにできなければ、どうしろと言うのだろう。
忙しく海外を飛び回る両親の代わりに兄弟たちはお互いに愛情を注ぎあっている。目に見えて分かりやすいものもあれば、少々分かりにくいものも。私も兄たちから貰った愛情を妹や弟に与えなければならないのに、卑屈な私はうまくやれないのだ。二人の首筋を見ると、どうも。


*


「名前、起きてるかい?」

コンコン、部屋のノックの音で目が覚めた。布団からのろのろと手を伸ばしスマートフォンの電源をつける。普段の起床時間を十分程過ぎていた。朝は何かとせわしない、この十分が命取りになることもある…急いでベッドから降り、起きていると返事をする。

「おはよう。寝坊かと思ったよ、朝ごはんできてるからね」

ジョナサンの声を聞きながら制服に着替える。長男ということを抜きにしてもしっかり者のあの人は最早母代わりのようなもので、家事をこなし兄弟たちの面倒も見るよく出来た人だ。ジョセフにも見習ってほしいものである。
駆け足で階段を降りるとダイニングにはジョセフ以外の全員が集まって食事をしていた。承太郎のドスの効いたおせえ、を受け流し定位置に座る。隣に座っていた徐倫が頬張っていたパンを飲み込み私を見上げた。

「名前、おはよう!」
「はい、おはよう」
「おはようございます、名前」
「ジョルノもおはよう。仗助は?」
「もう学校へ行ったよ。友達と何か約束があるみたいだ」

ふぅん。自分から聞いておきながら生返事をした。礼儀正しい弟の口元についたソースを拭ってやる。まだ幼い二人が顔中で一生懸命食べる様子は微笑ましい。箸を取りいただきます、と言うと承太郎以外の三人が召し上がれ、と答えた。

「早く食え、遅刻する」
「まだそんな時間じゃないですう」
「食ってからまた準備があるだろうが、てめーのトロさ考えろ」
「承太郎、口が悪いよ」
「じょうたろ、めっ」
「めっ、です」

三人に諌められた承太郎は小さく舌打ちをして立ち上がった。普段サボってばかりの不良のくせに、こういうときだけ気にするのだから少々腹が立つ。しかしああ言いながらどんなに私が遅かろうが私を置いて行くことは絶対にない。それを分かっているからこそ急いで食べ終え、顔を洗い髪を整えた。歯を磨いていると後ろの廊下をジョセフが通りかかった。

「おはよォ〜ん名前ちゃん」
「うふう」
「歯ブラシくわえたままじゃわかんないよン」

大きめのTシャツにジャージを履いた彼は寝ぼけ眼で茶化した後ダイニングへ向かっていった。大学生のジョセフは好きな時間に起きて好きな時間に学校へ行く生活をしている。ジョセフは承太郎のように授業にでなくてもテストの点数を取れる程頭が良い訳ではない。ジョナサンが卒業できるのかと心配していたが、成績優秀なシーザーさんがサポートしてくれているのだとか。羨ましい限りだ。
うがいをして鞄をひっつかみ玄関へ向かう。眉間の皺を深くした承太郎が待っていた。


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