「貴方達に妹ができるのよ」
母さんはそう言って大きくなったお腹を優しく撫でた。
僕は弟が四人いるけれど、妹は一人もいない。初めての女の子だと父さんも嬉しそうに笑っていた。承太郎や仗助はまだ小さいからよく意味が分かってないみたいだ。ジョセフは最近買ったクラッカーのおもちゃに夢中で母さんの話を聞いていない。ぱたぱた部屋の中を駆け回るのを、危ないからと父さんが追い掛けている。
「名前も決めてあるの」
「なんていうの?」
「名前だよ」
父さんが言った。振り返ると、じたばたと暴れるジョセフを父さんが抱き抱えている。ジョセフももう少しお兄ちゃんにならないとなあ、と父さんが溜め息をついた。
名前という名前は父さんと母さんが決めたらしい。とっても良い名前だと思う。名前、声に出してみるとなんだかくすぐったい。女の子の名前なんてめったに呼ばないから。
「ぼくが守ってあげなくちゃ」
ジョニィがお腹に耳を当てて言った。僕もその隣で耳を当てて、すぐ側でジョニィを見つめる。
「違うよ、僕やジョセフたちもいるんだから、ぼくじゃなくて、ぼくたちだよ。僕たちが守るんだ」
ジョニィは目をぱちくりさせていたけど、少し間をあけて「そうかな」と返事をした。僕は「そうだよ」と答えた。ジョニィはそれ以上何も言わないで目を閉じた。僕も同じように目を閉じると、お腹の中からとくんとくんと音が聞こえる気がした。心臓の音かなあ。この中に赤ちゃんがいるんだ。命って不思議だなあ。
かわいいかわいい名前。僕たちの名前。たくさん愛してあげるから、はやく、でておいで。
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