ちっこくてまるくてしろくてやわっこい。俺の新しい家族はそんな感じ。名前は名前。俺のいもうと。名前は今ベビーベッドの上でみじかい手と足をバタバタさせてやんの。
ジョナサンとジョニィは父さんと母さんと何か話してて、承太郎と仗助は仲良くひるね。いつもは「ジョセフはまだあぶなっかしいからね」と母さんがあまり俺に名前を近付けたがらねーけど、今は俺しかいないから、かわいいかわいい名前チャンをさわりほーだい。

「名前ー」

ベビーベッドの柵をおろして、ぷにぷにした頬っぺたをつつくと、名前はまんまるい目で俺を見上げた。濃いみどりいろ。俺と同じみどり。でも名前の方がきれいに見える。なんでだろーなァ。
しばらくつついてると名前のちっこい手が俺の指をつかんだ。つかんだっつっても、俺がちっと指を振ったら外れそうな。すごく弱い。女の子ってこんなに弱っちいのか?でもスージーはそんなことないし、いもうとってやつだからか。ハァ。いもうとってこんなにちいさくて弱くて、かわいい。

「こりゃ、俺がいなくちゃだめだわねん」

小さいピンク色の口に、この前見た映画のカップルみたいにキスをした。名前は顔をくしゃってしてキャッキャッて笑った。かんわいー。


*


名前がすなばで泣いていた。一人で。いつも使ってるお気に入りのシャベルとバケツを持っていなかった。どうしたのか聞いたら「じょうたろには言いたくない」って言いやがるから、俺はむかむかして、いいから言え、と大きな声で言った。とおくの先生がびっくりした顔でこっちをみたが、関係ねえ。名前はびくっとふるえて、小さな声で、おもちゃを取られたの、と言った。誰に取られたのかも。俺は名前をおいてそいつをさがしに行った。うしろから名前が俺を呼んだがふりむかなかった。
そいつはすぐに見つかった。きょうしつで名前のおもちゃを抱えてうろうろしてたからだ。俺はそいつの服をつかんで、ころばせて、おもちゃを取り返した。そしたらおきあがってきてなぐられた。なぐりかえした。すぐに先生がとんできてとめられた。

「○×くんは名前ちゃんが好きだから、いじわるしたくなっちゃうのかな」

先生が言った。じゃあもっとなぐっとかねえと。おなかをなぐるとそいつはとうとう泣き出して、先生がこら!と俺のうでをつかんだ。あとからやってきた名前がこまったかおをしてそいつを見ていたので、そいつのめのまえで手をつないでやった。
帰りのバスで「だからじょうたろにはいいたくなかったの!」とすねていた。なんでだ。「おまえはすぐ泣かされるから、俺が見てないとだめだ」そう言うと名前はほっぺをふくらませてそっぽを向いた。


*


「隣のクラスの△□、お前の妹のこと好きらしいぞ」

ニヤニヤと笑いながら肘でつついてくるコイツは、他人の色恋沙汰だとかの噂が大好きな下品なヤローだ。中学生らしいと言えば、らしい。俺がへえ、とさして興味無さげに返事をすると「可愛い妹が取られちまっていいのかァ!?」と声を上げた。いやよくねー、よくねーけど、まだ確信がある訳でもねえし、ただの噂の状態で喧嘩フッかけるのもなァ〜。あんまり喧嘩すると名前怒るんだよなァ。ってのをかいつまんで伝えるとそいつは面白くねえな、と肩を竦めて自分の席へ戻って行った。悪かったな。
昼休み、一緒に飯を食うのに名前を教室ま迎えに行くと、まだ着席したままの名前の前に男が一人立っていた。△□だ。楽しそうに話す二人、特に△□の顔は楽しそうで、あァ、だめだ。あれはガチだ。いつの間にか隣にいた承兄が「シメるか」って、怖ェよ。シャレにならないんで、俺に任せて欲しいっつってその場は収めた。
そっからの根回しは素早く。噂好きのクラスメイトやお喋りな女にいろんなことを吹き込んだ。△□はドギツイ性癖らしいとか、名前と付き合うには四人(俺以外ね)の兄の審査があるとか。話はたちまち広がり、△□が名前と接触することはなくなったし、片想いの噂もパッタリ消えた。ついでに言うと、噂の根源はすぐにバレた。

「何で私と付き合うのに承太郎達の許可がいるの!」
「あながち間違ってねーし」
「仗助のバカ!一生彼氏できなかったらどうすんの!」
「おにーちゃんがいるだろォ〜?」
「ジョセフみたいなこと言わないで!」


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