ドンドンドンドン!
扉を強く叩く音が、私と吉良さんのところまで響いてきた。思わず顔を上げると、吉良さんはこれでもかと眉間に皺を寄せ玄関の方向を見詰めていた。来たのだ、ジョナサンが。恐らくは、兄達が。ならば直ぐにでも部屋を飛び出して行けばいいのに、私の体は何故か縮こまったまま動かない。只じっと、吉良さんと同じ方向を凝視するだけ。恐ろしいのだ。何が恐ろしいのか。兄達か。これから起こることか。
扉が開く音がして、荒い足音が近付いて来た。ドッピオくんが叫ぶ声がする。靴は脱いで下さい!そして襖が開かれて、ジョナサンが入ってくる、筈だった。

「ッ名前」

切羽詰まった顔をして私を呼んだのは、ジョナサンではなかった。ジョニィは眉を吊り上げ、吉良さんに怒鳴り付けた。名前から離れろ。吉良さんは何も言わず、動かなかった。静かにジョニィを見上げていた。私は先刻とはまた違う恐怖で固まった。何故、ジョニィが一番にやってくるのだ。
私の恐怖の塊は物凄い形相で私に向かって来た。私はまたも声が出せず、依然動けもせず、視線だけを吉良さんに向けた。吉良さんは視線を絡ませはしたが、それ以上何もすることはなく、あろうことかジョニィの通り道の為に壁際へ避けた。ジョニィが私の目の前に跪き、両手で肩を掴む。ヒュッと息が漏れた。

「何もされてないのかッ!?」

返事ができない。何度も首を縦に振る。思い切り掴まれた両肩が痛んだが、そんなことを訴えられる様な状況ではなかった。ジョニィは私の返事を見ると手を離した。ホッとしたのも束の間、二の腕を掴まれ持ち上げられる。よろけつつも何とか立ち上がると、また肩に手が回った。そして無言で私を連れ出して行く。吉良さん、小さな声で呼んだが、吉良さんは私を一瞥し、窓の方に顔を向けた。私はそのまま、力強い腕に抵抗する術もなくそのまま敷居を跨いだ。
その先の居間では、ちゃぶ台を囲んだまま、皆が此方を見ていた。私が教会から帰って来た時と同じ様に視線が突き刺さる。やはり居心地が悪かった。然しジョースターがやってきて、私を連れ帰ろうとしてるにも関わらず、誰も慌てたり、何か仕掛けようとしている風ではなかった。ドッピオくんだけがしきりに私とディアボロを見る。合図があれば直ぐにでも、とでも言いたげな雰囲気だったが、ディアボロは何か指示する訳でもなく、あろうことか欠伸を漏らした。
どうしたものか。チラとジョニィの顔を盗み見た。途端に身体中が冷たくなって、思わず顔を背ける。ジョニィは酷く苛ついた顔で彼等を見ていたのだ。
相も変わらず五月蝿い心臓を落ち着かせようと、瞳を彷徨わせた先に、ディオがいた。ディオは私と目線を合わせ、そしてあの厭らしい笑い顔で言った。

「名前、いいのか?」

黙れ!
何が、と、私が問い返す前にジョニィが怒鳴った。条件反射で私がびくつくと、ディオが鼻で笑った。緩慢な動作でディオが立ち上がる。ジョニィは警戒してそれを見ていたかも知れない。私はというと、ディオの向こう、縁側に続く窓を見ていた。そこに揺れる、紫色のシルエットを。


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