※長い
祖父が運転する車内でたくさんのことを聞かされた。
まず、うちの家系について。その家系にまつわる戦いについて。それから先程の妖精について。いっぺんにたくさんの情報が入ってきて私の頭は混乱していた。波紋、吸血鬼、星型のアザ、何もかもが現実離れし過ぎていた。すんなり理解することは難しかったけれど何度も聞き返すのは悪い気がして止めておいた。ただひとつ、母が私を親戚たちから隔離したがった訳だけは理解できた。要するにこの一族の因縁から私を引き離したかったらしい。母はアザがなかったし私もなかった。これ幸いと祖父たちから逃げていたようだ。
しかし私が先程の妖精…スタンドというらしい、が見えてしまってそうもいかなくなった。極めつけに私の首筋にはアザが浮かび上がっているらしい。自分では見えないのでらしいとしか言えないが。
自分の首筋にそっと触れた。指先では何も分からない。
*
大きな家だった。うちはありふれた一般的な一軒家だけど、ここはどこぞのお金持ちが住むような、はたまたお高い旅館のような、立派な佇まいだった。
祖父に続いて玄関に入る。小さな声でお邪魔しますと言うと、祖父が行儀が良いなと大きな手で頭を撫でた。あがりなさい、と言われそろそろと靴を脱いだ。広い玄関にぽつんと私のローファーがあるのは違和感があったので、端に寄せておく。祖父について長い廊下を歩いた。中庭も立派でついつい見惚れてしまう。何故うちとこんなに差があるのかと思ったけれど、母のことを思えば当然のような気もした。祖父の恩恵は一切受けていないのだろう。
そうして余所見をしながら歩いていたものだから立ち止まった祖父に気付かずぶつかってしまった。慌てて謝罪をしようと祖父を見上げたが、祖父は目の前の障子を睨み付けるように見ていた。そして連れてきたぞ、と言う。静かに障子が開かれると、大きな和室に不思議な格好をした男性と学生服が二人、それから敷かれた布団の中に母によく似た女性が横たわっていた。
四人の視線を一気に受けて良い気分はしない。祖父に隠れるようにして後ずさると背中をぐいと押され前につんのめった。女性と目が合う。祖父が言う。お前さんの叔母、お母さんの姉じゃ。目を丸くする私を見て、叔母と呼ばれた女性は目を潤ませて会いたかったわ、と漏らした。近くへ来てくれる?、言われるがまま布団の側に腰を下ろした。白くて細い手が私の頬に触れる。あの子によく似てるわ。目を細める叔母はやはり母に似ていた。顔色が悪い。体調が良くないのだろうか…顔を上げると、学生服の一人がこちらを見ていた。その緑色の目と厳つい体格には死ぬほど見覚えがあって、思わず声を上げてしまう。
「じ、JOJO!?」
「ああ、ほら、やっぱり。あの子だよ」
「…知らねえな」
「なんじゃ、知り合いか?」
祖父が首を傾げる。厳密に言えば知り合いではなかった。一方的に知っているだけ。うちの高校でJOJOを知らない女子はいないだろう。ハーフで美形で体格もよく頭も良いのに喧嘩は強い、女子のツボを突きまくり取り巻きがいる彼はすごく目立つ。しかも隣にいるのは最近転校してきた花京院くんであった。彼は私を知っているようで、同じクラスだよね?と首を傾げてきた。頷く。JOJOは私を無遠慮にじろじろと見詰めた。居心地が悪い。
「とりあえずわしらだけで話をしよう。アヴドゥル、すまんがホリィを頼む」
「分かりました」
黒人のお兄さんが叔母の側にどかりと座った。叔母は私から手を離す。少し残念そうだった。そして微笑んで、承太郎をよろしくね、とだけ言って目を閉じた。
*
ここからも怒濤の情報量だった。
一番の驚きはあのJOJOが私の従兄だったことである。あの人気者の彼と平々凡々な私に血の繋がりがあるなんて、神様は悪戯である。それからJOJOや花京院くん、祖父、先程の黒人のお兄さんもスタンドを使えるらしかった。そして叔母の体調不良の原因であるDIOという吸血鬼を倒すため、皆でエジプトへ向かうと言う。そのDIOとやらの体は私たちの祖先、祖父の祖父、ジョナサン・ジョースターという人の体で、彼の影響で血の繋がりがある私たちにもスタンドが発動したらしい。祖父はアザがない母や私には影響はないと踏んでいたそうだ。お前さんの父さんが連絡してくれて良かった、祖父はそう呟いた。様子からして母のことも心配していたようだった。
そして驚くことに祖父は、そのエジプトへの旅に、私の同行を願い出たのだ。スタンド使いは一人でも多く仲間に欲しいのだと。例えまだ能力が未知数で使いこなせてなくとも。
まるでB級SF映画だ。突然降りかかる非日常に私の頭は追い付いていない。冷製に装っておきながら、まだ今朝のまま混乱を極めている。
「勿論無理にとは言わない。あの子がここまでやってきたことを無下にするようなもんじゃ。その上お前さんは女の子じゃからのう。しかし、わしの気持ちも汲んではくれんか」
祖父の言うあの子は母のことだろう。俯いていた顔を上げるとあの緑が私を見ていた。
母も私も持っていない緑。叔母とJOJOは持っている緑。
「さっき初めて会ったとはいえ、お前さんも可愛いわしの孫じゃ。わしやこやつらが全力で守る…傷物にはせん。最大限の気遣いをしよう。だから、頼めんか」
こやつら、のところでJOJOの眉がぴくりと動いた。花京院くんは力強く頷いてくれたが。
どうやらこの歳にして人生最大の山場がきているようだ。汗ばむ手のひらを隠すようにテーブルの下できつく握った。
/
なげえよ
ある程度構想練ったら連載したいです
ALICE+