惚れたもん負け

生まれてこの方、自分の性別に、この身体に対して大きな不満を持った事はない。
特に女性の身体に対する憧れや羨望なんか以ての外。
そら、女やったらこんな時楽やなーぐらいの事はあるが本気でそれを望んだ事はない。
男として生を受けたから俺はこうやって元気に成長でき、本人らには言わへんけどメンバーなんかとも出会えた事を思うとより一層現在の性別に不満なんかない。
それは、メンバーのゾムと恋をし、お付き合いする事になっても変わらん事で、男に生まれたから出会えた相手で男の俺を好きだと言ってくれ選んでくれたその気持ちは間違えなんかないと思うからドラマや漫画よろしくの、俺が女だったらっなんていう感情は持ったことはない。

ただ、魔が差したのだ。

大先生とふたりの飲みの席でグルちゃんとよろしくやってる大先生に唆されたんだ。
こんなんただのコスチュームプレイやと、マンネリ解消にええと、一周回ってグルちゃんは最近軍服を着ての捕虜シチュプレイがお気に入りやとか……聞きたくもない事グダグタ言いながら、まぁ1回やってみ?そう言って渡されたセーラー服があったから、ちょっとした好奇心だったんや。
しかも、これが初犯や。
常習犯じゃないっ。


趣味でもなけりゃ、女性に対する憧れでもない、ほんとにただただ魔が差しただけ。
貰い物って事で捨てることも出来ないまま部屋の隅に放置してたのを見つけてしまい好奇心と探究心がうずうずと出てきてしまった、いつもの俺なら辞めたが、酒も回ってて正常な判断何それ状態。
ふらふらとした思考で着たセーラー服姿は案の定似合っておらず、少し空いた首元、短い袖と膝上のスカートの下から除く喉元や腕に脚は男性のものであるのがよくわかる。
鏡に映る自分をみて気持ち悪さと笑いがこみあげてくるのもしかたない。
これはとてもじゃないがゾムには見せれない


ガチャ
「じゃまするでー」
「はっ?えっ??」
「えっ??」

どんなタイミングやねん。
鏡に集中しすぎて鍵をあける音に気づかんとか、まさかの自体にお互い動きが止まる。
だが、先に思考が動いたのはゾムの方で

「どういう状況?」

そこからはほぼパニック状態のまま気づけばベッドの中に引き篭もり梃子でも動かん状態をキープ
こんな姿見られるなんて羞恥やら色んな感情が溢れる。
ただただ間違えや!初犯なんや!!帰ってくれ!と同じ言葉を繰り返す
ゾムはゾムで意図の読めない声のトーンでとりあえずベッドからでてこいと諭してくるがそれがまたなんだか恥ずかしくてたまらなく布団からはでれないでいる。


「頼むわゾム……今日のところは帰ってくれ…」


思ったより情けない声でた。
布団を握る手に力がはいる。


「なんで帰らなあかんの」
「いや、俺の精神衛生上ちょっとゾムさんにおられたらきついんですって」
「でてきてや」
「ゾムさん俺の話聞いてる?」
「いや、めっちゃ可愛かったってトン子ちゃん」
「なんかめっちゃプライド傷つけられた気がするんやけど…」
「はははっ」


不機嫌そうな顔をしぶしぶ布団からだすと、少し困ったように笑うゾムがベッドの横にいた。

「なんやねん」
「めっちゃ不機嫌そうやな」
「当たり前やろ…色々失ったわ…」
「大先生の入れ知恵?」
「入れ知恵ってよりはあのポンコツに唆されたんや」

そのまま顔を触ろうとしてくる手を弾き、のそのそと布団からでる。


「うんうん、可愛い可愛い」
「ゾム、お前にええ眼科紹介したるわ」
「えー目悪ないで俺」

だって、

ポスっ

ゾムに押されるがままベッドへ逆戻り。
あからさまニヤニヤとした顔のゾムのアップで視界を埋める。




「トントンやから可愛いおもんやで」



こりゃ美味しく頂かれるなと、明日の腰の事を心配しながらゾムの首に手なんぞ回すから結構これで俺もほだされてるなと苦笑いがこぼれた。











後日。

「次はこれな、トントン」
「なぁゾムさん。味占めすぎちゃうか?」
「グルちゃんとこの最近のブームはポリネシアンセックスらしいで、俺らも便乗する「よーしトントン張り切って衣装着ちゃうぞー」わートントンありがとーその次はどれにしよっかなー」
「くっそぉ……」
暫くゾムがコスプレにハマった。