竜の懐は

竜の懐は酷く温かく、抱え込まれれば最後、抜け出すことは出来ないだろう。うんと長い腕が包み込み、しっかりと回されて逃す気など一握りとてないのに逃げても追いかけるだけだから構わない、なんて言うのだ。そうして過ぎた幾許の中で彼が宝を守る番人なのだと笑って言った悪友の言葉を思い出した。心地良さから逃げ出せそうもない腕の中で、彼の宝である自覚を漸く持てば一層目の前の男が愛おしく思えた。

「大好きよ、バナ。」

オレさまも、と、その言葉を期待している私をキミはきっと知らない。