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全国高校総合体育大会、通称インターハイと呼ばれる大会は、年間を通して春高と並ぶ大きな大会だ。

そしてその大会は、長期連休真っ只中に行われる。
7月下旬から、東京に来ている私たちは、川西の親戚の家に宿泊し、電車を乗り継ぎ目黒にある総合運動場に来ていた。
その中でも、多くの人が集まる体育館。その入り口に掲げられた看板は、いつにも増して人の興奮を煽るものだった。

本日は、全国高等学校総合体育大会バレーボール競技高校男子の部の準々決勝が行われる。
出場チームは、宮城県代表白鳥沢学園。
入り口でトーナメント表をもらった川西と私は、人混みを避けながら、目的の場所へと体育館の階段を登る。

ごった返す人の波でも一際目立つ「獅子奮迅」と書かれた横断幕、ブラスバンドにチア、応援団と相変わらずものすごいラインナップ。
さすが強豪校と言われるだけあるなぁと毎回感心する。
そして紫のユニフォームが、彼らの目印。あ、それと、顧問の先生の怒鳴り声。これは昔も有名だった。


私と川西はと言うと、この熱に埋もれながらも、紫一色に染まったスタンド急ぐ。まだ試合は始まってはいないが、バレー部員がサーブの練習をしていた。

なんとか、白鳥沢側の応援席に到達し、応戦先の近くに腰を下ろす。隣にいた白鳥沢生にはあまりいい顔はされなかったけど。どうせ牛島さん目当てだろとか思ったに違いない。

‥まさに私たちは、若利目当てなので、何も言うまい。


ピ!と電子音が響き、2チームはネットを挟んで並び、相手そして審判に挨拶をすると、それぞれのコートに戻り、1チームずつポジションと番号の確認が始まる。
そして、それが終われば試合が始まる。

一番前列の太鼓が、始まりの合図。どこからともなく聞こえてくる応援の歌詞に合わせて叫んでいれば、隣の白鳥沢生に変な顔をされ、隣の川西には爆笑された。

そして、なんのためらいもなく普通に叫んでいた自分にも驚いた。

「待って、なんで分かるわけ!?」
「…染み付いたくせ、的な?」
「なにそれ、ウケる」

爆笑する川西を尻目に、口元に手を当てて叫んでいると、いつの間にか紫色のメガホンを渡され、点が入れば立ち上がり、紫の集団と一緒になって叫ぶと言う構図が出来上がっていた。

最初は馬鹿にしていたくせに、試合が進むにつれて、川西も同じく立ち上がりコートに声援を送っていた。


試合は2-1で白鳥沢が勝利に、準決勝に進出を果たした。


「この後どうする?」

時刻は15:30。夕食までは時間があるし、白鳥沢の試合は、明日までない。微妙に時間が空いてしまった。


「じゃー、太一に連絡してみよっか。
もしかしたら、時間合うかも」

ダメ元でね。そう言ってスマホを取り出した川西は、ポチポチと操作し数秒もしない間に、スマホをポケットに戻した。

「とりあえず、連絡だけ入れた。
無理だったら、ご飯食べて帰ろ」
「うん、そうだね。」

そう話しながら、白鳥沢生の移動する波に乗ってスタンドを後にした。

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