01

「そういえば、知ってる?」
「ん?何が?」
「昼休みとかに、外でバレー練習してる子達。」


教室移動の合間、偶然職員室から出てきた清水を捕まえて、前から気になっていることを聞いてみた。

新しいビブスだろうか、清水から半分奪い取った紙袋の中には、鮮やかな蛍光色がチラチラ見える。それと、黒っぽいものも。


「…それ、うちの一年生だよ。」
「え、一年てバレー部?」
「うん。」
「なんで、外でやってんの?
体育館そんなに狭かったっけ?」


ぼんやりと体育館の中を思い出しながら首をかしげる。
まぁ、コート一面くらいしか取れないくらいだけど、バレー部自体そこまで人数いないはずなのになぁ。

「少し前に問題をおこして、澤村が怒って、一年を追い出した。」

……まじで。

「…な、なるほど。
澤村怒ると怖いからね。」

勇者か、そいつら。
驚愕する私に、清水はくすりと笑う。

「怒られたことあるの?」
「ないない。」


2年になって、クラスも変わって理系と文系に分かれて。
そしたら必然的に清水ともクラスが合わなくなって、今ではゆっくり話せる時間がなくなってしまった。
なんて悲しいんだ。悲劇。

「そうだよね。」

町田はそういうミスはしなさそう。と清水はニヤリ。
よくわかってんじゃんか。

「その1年、どうなの?」
「なかなか、面白いよ。」
「あの、2年の子達より?」
「うーん、別ジャンルかなぁ…」

……バレー部、バラエティーに富んだ奴ばっかだな。あの2年の子達とは、別ジャンル…めっちゃ見たいんですけど。

ふと頭に浮かんだ、坊主頭と小さい前髪がオレンジ色の彼。あまりにも騒がしかった記憶しかない。
初めて会った時は、あの騒がしさに私は清水の凄さを痛感したものだ。あそこは動物園のようだった。

今でも、彼らは変わっていないのだろうか。だとしたら、また見てみたい。
スパイクもレシーブも。

「インハイ予選、応援行くよ。」
「うん、ありがとう。」

頑張んないとなぁ、とフフッと笑う彼女に、ニンマリと頬を緩める。

最近、こういう何かに一生懸命になれる彼女は、とても魅力的だ。でも、彼女に男の影が見えないのは、きっと全身全霊でバレーに取り組んでいるからなのだろう。

少し前に練習を見に行ったとき。
澤村やスガさんと何やら真剣に話をしている時。後輩くんを叱っている時。頭をくっ付けて何かを話しているとき。
なんていうか、みんなすごく眩しくて輝いて見えた。

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