03

練習試合が始まる前に、なんとか飲み物とタオルを準備できた私は、チラッと烏野をみると向こうも清水が忙しそうに動いている。

マネージャーって以外にハードだよね…なんてタオルで汗をぬぐいつつぼんやり思いながら、音駒の練習を観察する。

ト…黒尾はセンター…ミドルブロッカーで、金髪プリンがセッターか、でモヒカンがレフト、お地蔵さんみたいな人がライト。
あとは、あの小柄な人がリベロと、バック。
へー。
対人とかサーブレシーブを見ていると、とてもレシーブがうまいチームのようだ。
だいたいがセッターに位置に帰ってるし、なんというか体がとても柔らかいから低くても、きちんとアンダーで返せてる。それがこのチームの特徴だろうか。

ぼんやりと考えながら見ていると、バチっと黒尾と目があった。ぽかんとして見ていると向こうはニヤリと笑い、ヒラヒラと手を振っている。

これは振り返すべきか。と悩んだ末に、ニコッと笑って置いた。初対面でそんなに馴れ馴れしいのはちょっと引くし?

それからレシーブ練習が始まり、カゴと一緒に直井コーチと選手1人がコートの真ん中に出て行く。それを数本観察して、私も小走りでコート中央に向かった。

「直井コーチ」
「え?あー、烏野の。どうかしたか?」
「私ボール出しましょうか?」
「え?」
全く考えてもいなかったのか、目を丸くした選手とコーチに続ける。
「スパイクを打つコーチにボール渡せばいいんですよね?」
「あ、あぁ…じゃあ頼めるか?」
「はい。では、君はあちらにどうぞ」

驚いていた選手1名を、コートの列に誘導し、私は両手にボールを抱えた。

高ん校男子だけあってやっぱり5号ボールは大きい。

それから、ボール出しを1カゴ分終えると、ボールを集めてもう一度レジーブ練習をすると、あっという間に12時になろうとしていた。

「サーブ!」
「うぇーす!」
「30本入ったやつから休憩なー」

黒尾の声を合図に、左右に分かれてサーブ練習が始まった。「ナイッサー」とテキトーに声をかけボールを避けつつ、猫又先生に頼まれていたお弁当を受け取るため体育館を抜け出した。


ダンボール箱3つと500のペットボトル1ダースとちょっと。これは、ミスった。
台車でも借りてくれば良かったな。

とりあえずお弁当だけでも運んでしまおう。よっこいせとダンボールを持ち上げる、往復すること3回。

あと2回往復すればとりあえずは、運び終える。そろそろ30本終えた選手も出てくるだろうし、少し急ごう。

さて、500のペットボトル12本て…約6キロくらいを2往復か。
…うわー、めんどっ!

ってここでごちゃごちゃ考えてても終わらないし、と箱に手を伸ばした瞬間私よりも先にダンボールに到達する手が2本。

驚いて顔を上げれば、黒尾がおっとと呟きながら、ダンボールを持ち上げていた。

「え?」
「これ、1人で持ってく気だった?」
「黒尾…サーブ練は?」
「もう終わったから、様子見に来た」
「はやっ!」
「つかこれ、俺持ってくから」
「は?いや、重いでしょ?」
「重いから俺が運ぶんでしょーが。」

思いもしなかった黒尾の言葉に驚いていると、「ほら、行くぞー」とダンボールを持ってスタスタ歩いっていってしまった。その背中を追って、慌ててペットボトル数本を抱えると私も歩き出した。

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