「「「「「かんぱーい!!!!」」」」」

今月の満月の日には宴会をやろうとの飲んだくれ達の提案により,今夜は宴会。まあ,何だかんだ理由をつけて,いつも宴会を行っているわけだが。神様達は酒が本当に好きだ。かつ,本当に強い。

「主も飲もうよ。お酌してやるからさ〜。」
「いきなり日本酒は・・・。とりあえず,ハイボール飲みたいな。」

宴会開始早々,既に出来上がってる次郎に絡まれた。次郎にお酌してもらった盃を飲み干し,現世で買ってきたハイボールの缶を開ける。金色の缶は,満月の光が反射してキラキラと光っていた。

「大将,気をつけろよ。そんなに強くないんだから。それに,最近寝不足なんだろ?とりあえず,つまみ食いながら飲めよ。」

男前すぎる薬研が,綺麗に飾り付けされたオードブルを差し出してきた。バラを形取ったサーモンを選び,口に運ぶ。見た目だけでなく味も最高だった。

「最近夜中にシャンシャンと音がして眠れないんだよねえ。耳鳴りかな?」

なるほど。と薬研が苦笑いしたところで,突然ステージがライトアップされた。聞き覚えのある音楽と共に,タンバリンを持った長谷部が現れる。そして,刀同様に鋭い切れ味で踊り出した。
お前だったのかーーーー!!!
この日のために徹夜で練習してた健気な忠臣。・・・褒美を取らせよう。長谷部の奮闘により,宴会は大盛り上がりの末に閉幕した。



自室に戻り,次郎から貰った花魁のようなド派手な赤い襦袢に着替え,飲み直す。燭台切が漬けてくれた梅酒で一人きりで晩酌するのが,私の日課である。こうやって一人で飲むのには理由があった。酔って良い気分になると,目の前の男を誘いたくなる衝動に駆られるのだ。だから,なるべく男とサシ飲みはしない。

「飲んでるか?」
「飲んでるって知ってて来たんでしょ?じじいはさっさと寝たら?」
「すっかり目が覚めてしまってな。どれ,じじいもご相伴に預かろう。」

言い方こそ柔らかいが,こちらの返事を待つつもりはないようだ。襖の向こうから,白い夜着姿の三日月が現れた。

「・・・随分と派手な夜着だな。」
「次郎に貰ったの。詫びの品だとか言ってたけど。」

冷え性の三日月のために,梅酒をお湯割りにして渡す。横目で見た彼は,柔らかくて優しい笑みを浮かべていた。目に毒だ。どうせなら,いつもの底意地の悪い顔でいて欲しい。三日月を視界に入れないよう,手元のグラスに目を落とした。

「なあ。どうして俺を見ない?」
「どこを見ようが勝手でしょ。見なきゃいけない理由でもあるの?」

すると束の間,背と膝裏に腕を回され抱きかかえられた。とっさの事で抵抗する間もなく,奥の部屋にある布団に寝転がされる。

「随分と俺を意識してくれているようだ。俺が欲しいか?」

俺は主が欲しい。と言って,優しく唇を重ねてきた。これほどかという程に。啄むようなキスの繰り返しの中で,はしたない衝動がムクムクと起き上がる。

「・・・ねえ・・やめて。キス,口吸い・・しないで・・・。」

こちらの制止などお構いなく,三日月は舌を差し入れてきた。梅酒の甘い味がする舌。ただでさえ酔っているのに,更に酔いそう。何度も舌を優しく私のそれに絡ませた後,下唇をちゅっと吸われた。

「・・ね・・え。本当・・に,やめて・・・」

三日月の胸を押して避けようとするが,びくともしない。額,瞼,頬にキスに降らせた三日月は,襦袢の紐に手を掛けた。襦袢がはだけ晒された肌に,ひんやりとした空気が触れる。ふるっと身震いすると,覆い被さるように抱き締められた。

「こうするのは,久しぶりだな。」

三日月の一言で,記憶を封印したあの夜を思い出した。
ーーー不毛すぎて救いようのない夜。この男は,あの夜を思い出して,何を思っているのだろうか。

「・・・っ」

三日月は,鎖骨に舌を這わせ,左胸を手のひらで優しく包み込んだ。焼き切れそうな理性を必死に留める。これ以上触れられたら,もう。

「好き・・でもない女と寝るのは,不毛,だと思う・・」

私に触れていた三日月が,顔を上げた。

「・・・俺の心など,知らぬくせに。」

三日月はキュッと眉間に皺を寄せ,無理矢理笑みを作ったような顔をした。それは,私が今までに見たことのない顔だった。

「おやすみ」

目元を手で覆われた瞬間,ブラックアウトした。

09 この肌に熱だけを残して



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