先日,加州が誉を取った。新しいネイルが欲しいという願いを叶えるべく,加州と近侍としての機能が形骸化している三日月と万屋へ向かった。万屋へ着くやいなや,近侍であるはずの三日月が行方不明になった。

「あれ?主,三日月がいない。ついに徘徊始まったんじゃない?」
「どうせ,茶葉売り場か菓子売り場にいるよ。でも,冗談抜きで,イチョウ葉エキスのサプリ飲ませようかな・・・。」

買い出しメモに“イチョウ葉エキス”と書いていると,人に囲まれた。私と加州を取り囲む,長谷部・長谷部・長谷部・・・。圧倒的な威圧感である。どこのお宅の長谷部も“主命”であり,他の審神者に友好的ではない。すると,長谷部@が声を掛けてきた。

「お前らに是非会ってみたいと思っていたのだ。お前の所のへし切長谷部は俺達の誇りだと,ヤツに伝えてほしい。」

何だか良くわからないが,私達を取り囲む長谷部達は友好ムードだった。加州は,彼らと一言二言話した後,先に入っててと背中を押した。ひとまずイチョウ葉エキスのサプリをカゴに入れ,書籍売場へ向かった。書籍売場の一箇所には,ある作家の漫画が沢山平積みされていた。

「大人気ですな。やはり,私の目に狂いはなかった。」

最近,話題沸騰の漫画家集団“あるじ”。圧倒的な画力とストーリーの緻密さで“へし×さに”を描き,芸術の域まで高めている。小さい頃からあらゆる漫画を読み込んできた目利きの私。デビュー作の表紙を見てすぐに,これは売れるわと確信し,ジャケ買いした。

「主,お待たせ!・・・って,主,この漫画知ってるの?」

濃厚な絡みも売りであるため,少年の姿をした加州に言うのは気が引けた。しかし,中身は自分より大人であるからと言い訳をし,首を縦に振る。

「この表紙のカラー可愛い??」
「うん,凄い可愛いよね。カラー担当は“紅爪”先生だっけ?この筆使い,一朝一夕で得た技術じゃないよ。こりゃ本物だわ。」

そう言うと,加州は思いっきり桜を飛ばし,撫でて!とくっついてきた。他には?と続きを促すので,加州の頭を撫でながらウンチクを語る。

「“忠犬”先生の画力とストーリーはもうヤバイね。2作目読んだ?ライバルの三日月が邪魔して嫉妬した長谷部が,審神者に言う台詞。『貴方の閨に侍る時の俺の刀は抜き身ですよ。貴方の鞘に収めるのですから』そこからの絡み。あれヤバかったなー。死んでもいいと思ったもん。“稲荷”先生と“そろばん”先生が,しっかり脚本考えてるんだろうね。」

加州と盛り上がっていると,おお〜と歓声が聞こえた。そこへ向かうと,今度はよその三日月やら小狐丸らに囲まれた。

「おお。お会いできるとは。小狐は夢を見てるかのようです。」

紅い目をうっとりと細めて言う小狐丸。確かに,うちに彼はいないが。よその三日月は顔を赤らめ,恥ずかしそうに袖で口元を隠している。彼の手に握られている紙を見てみるとーーーー

「!!!!!」

全裸で仰向けに横たわる下ぶくれマロ眉女に鳥が覆い被さり,女の乳首を啄んでいるというあられもない春画だった。

「『アレ,にくいうぐいすだのう』!?ちょっとこれ・・・」
「はっはっは。“画狂老人三日月”とは,俺のことだ。」

三条の集団の中心を割って,扇で優雅の口元を隠した三日月が現れた。他の三日月にはない腹黒そうな雰囲気が,彼に一層の色気を与えていた。扇を持たない手は,茶葉と茶菓子が入った袋を携えている。間違いなく,うちの三日月である。

「何やら,本丸では絵図を描くのが流行っているようでな。俺も美しき思い出を絵図にと描いたのだが,これが好評・・・」
「三日月。帰ったら,刀解。」

カリスマ



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