*全体的に酷すぎる,長編03後


「審神者様,お邪魔いたします〜。」

首に風呂敷を巻き付けたこんのすけが,ヘロヘロな状態で本丸にやってきた。長谷部が心配そうにこんのすけに話しかける。

「おい,大丈夫か。」
「おお,同士よ。16連勤でこのザマでございます。社畜でこの体たらく,お恥ずかしい限りです。」

長谷部とこんのすは,“社畜仲間”として互いを“同士”と呼び合ってる。それ以外にも,長谷部の趣味とこんのすけのそれが同じだとか。

「恥ずべきことはないぞ,同士。主君のため,身を粉にして働くお前を俺は誇りに思う。主が同士のために黒糖稲荷寿司を用意して下さった。伏見の酒もある。存分に休め。」
「これはこれは有りがたい!もしやと思い,稲荷寿司を入れるタッパを持って参りました。」

"三日月お茶事件”の穴を埋めるため,こんのすけにスライディング土下座をした結果,政府から特別ボーナスが支給された。こんのすけ様々である。

「主!俺は,こんのすけらと軍議を行うため,少々席を外します。ご用の際は何なりと。」
「(・・・軍議?)うん,わかった。」


「さて。これより軍議を行う。」
「同士よ。ついに決断してくれたこと,こんのすけは嬉しく思いますぞ。」
「ああ。慈悲深き主から,応援するとのお言葉を頂いたからな。思いっきりやろうと思う。もう後ろ髪引かれることは何もない。」

室内には,こんのすけの他に加州と博多がいた。加州は耳飾りをいじりながら言う。

「長谷部が絵を描くのが趣味だったなんて知った時は驚いたよ。しかも上手いんだもん。」
「主に花壇の生育状況を克明にお伝えするため,絵を描いて見せてたところ,上手だと褒めて下さったのだ。それ以来,手慰みに毎日主だけを書いている。」
「同士の部屋の壁には,審神者様の絵が貼り巡らされているのですよ!圧巻ですね,あれは!秘めておくには惜しい才能ですので,公にしてみてはとワタクシがお誘いしたのです。」

長谷部とこんのすけによる背筋が凍りそうな暴露によって場の空気が凍り付いた。しかし,博多が勇気を振り絞って,そろばんを弾きながら長谷部に噛みつく。

「長谷部!こげんすくりーんとーんを貼ったら,採算の合わけん。」
「表現したいものを形にするには,必要だから仕方ない。」
「博多の言う通り,このままじゃ高くて売れないよ。からーのぺーじも多いし。」
「俺は,頭の中にある絵図を忠実に形にするだけだ。」

軍議開始そうそう,長谷部と加州・博多の意見が割れた。緊張した空気が場を覆う。でもさあと,爪を塗る加州が核心に切り込む。

「主の生娘設定って,無理があると思うんだよね。主って生娘じゃないでしょ。現世の女子は,婚姻前にも“そういうこと”するらしいよ。主,絶対してるって。1人で酒飲んでるとこ見た事ある?あの哀愁,生娘じゃ出せないよ。」
「おいっ!!!この世で最も清らかな主を侮辱するつもりか!?斬るぞ!!!」

そこに,まあまあとそれまで酒を舐めていたこんのすけが入り込む。

「主が生娘かどうかは・・・さておき,需要の問題ですからねえ。"へしさに”は大人気ですよ。それに,生娘設定は王道ですから。」
「そん通り!万屋でも売れ筋だと言いよったったいちゃ!」

フンと満足気に鼻を鳴らす長谷部に,こんのすけが前足でペシペシと原稿を叩く。

「しかしですよ,同士。あなたが描く審神者様は,やや体が薄いのですよ。」
「え,そうか?主は華奢でいらっしゃるから,その・・・」
「審神者様がこの本丸にお越しになった日,ワタクシは下着姿の審神者様を見ました。出るべき所はしっかり出てました。あの方,着痩せするようですね。」
「・・・!!!何だと!?同士,それは間違いないのか!?!?」

はっきり見ましたので。と,モシャモシャ黒糖稲荷を食べながら言うこんのすけ。真っ赤になりながら,己が描いた原稿を凝視する長谷部。

「そうと聞いたら長谷部。早速,主の体はほわいとで修正しよう。俺が塗るよ。」
「加州,頼む。博多は,万屋との連絡を頼む。締め切りは死守すると伝えてくれ。」
「任しぇてくれんね!!」
「「「「では,解散!!!」」」」」

軍議



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