夕餉後,いっしょにはいろうと甘える小さな三日月と入浴する前にこんのすけが現れた。三日月が小さくなった原因は,万屋で新発売された茶葉だったとか。長谷部が,新しい茶葉が・・・と言っていたことを思い出し,合点がいった。他の本丸でも小さくなってしまった三日月がいるとのこと。どんだけお茶が好きなんだよ。数日経てば元に戻るらしい。政府の管理ミスということで,お見舞い金が支給されるとか。三日月が可愛くなった上にボーナスが入るなら,一石二鳥である。

「こんのすけ,ご苦労様。私は,小さい三日月とお風呂に入るからこれにて。」

審神者様どうかご無事で・・・と聞こえたような気がしたが,気のせいか。



「三日月,風呂上がりか?こっちに来なよ。一緒にかるた取りをやろう。雅だろう?」
「いいぞいいぞ。おれもさんかしよう。いまのおれは,きげんがいいからな。」

風呂上がりでご機嫌な小さい三日月は,かるた取りの輪に入った。歌仙の他には陸奥らがいたが,すでにベロベロ状態。辺りには多くの酒瓶が転がっていた。

「おんしゃ,主と風呂に入ったが?まっこと羨ましいのぉ!!」
「主ってさ,乳はデカいのかい?アタシに教えなよ!」

上品にかるたを取る小さな三日月に絡む酔っ払い。酒席に下世話な話は付きものらしい。小さな三日月はニッコリと微笑み,酒を少し口に含んだ。

「あかるいところでははじめてみたが,あるじのらたいは,たいへんよいぞ。いろがしろくてきゃしゃでな。だきしめたらおれそうなのに,ちちはふくよかで,うえをむいてる。しりはこぶりで,きゅっとうえにあがっていてな。こしもくびれてなまめかしい。ゆにつかると,しろいはだが,ももいろにそまってゆくのだ。ちちのさきは,うめのはなのようにあかくいろづいてなあ。いとみやびなり。」

饒舌に語る小さい三日月は,梅の花を詠った紀貫之のかるたを酔っ払い達に見せた。それを見た歌仙は,これは雅だ・・・と呟く。

「やわらかくあたたかいちちにかおをうずめるのは,じつにここちよい。ころものうえからでもじゅうぶんたのしめたが,なまのちちはたまらないな。はるのうぐいすのように,おれはあるじの“うめのはな”をくちにふくんでやった。はずかしそうにかおをあからめるあるじが,なんともいじらしくてな。はっはっは。」

もっと話を聞かせろと詰め寄る酔っ払い達に,小さい三日月は衝撃的なことを言った。

「だがなあ。いまのおれは,“かんじんなところ”までもちいさくなってしまった。これでは,あるじをなかせることはできまいて。やはり,“かたな”はおおきいほうがいい。まあ,あるじがのぞめばべつだ。こたえてやらねば,おとこがすたるというもの。」

「アンタッ!!!中身は,じじいのままだったのかい!?」
「わ,わしは知らん!!なぁーんも聞かんかったことにするぜよ!!!」

冷や汗をかきながら絶叫する次郎らをよそに,盃の酒をグイっと飲み干し,小さな三日月は立ち上がった。わらべなりのたのしみがあるゆえ,じゃまはするなよと言い残して。



「かせんたちとかるたをやっておった。あるじもやったことはあるのか?」

鼻歌まじりに入室してきた小さな三日月が,私と向き合う形で膝の上に座る。やったことあるよというと,すきなわかはあるか?と聞かれた。

「『あらざらむ この世の外の 思ひ出に 今ひとたびの 逢ふこともがな』好きというか,心情を理解できるなあって。大人には色々あるのよ。」

そう言うと,小さな三日月は,カアッと顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。

(・・・!!!なんてかおをしておるのだ!!!)

短い腕を私の胴に巻き付け,またしてもグリグリと胸に顔を埋める。私は,すっかり眠くてぐずり出したのだと勘違いし,小さな背をゆっくり叩く。ポンポンという音が,かくごしろよ。という声をかき消した。




ーーーこの短い命が終わるまでに,もう一度あなたに抱かれたい。愛したあなたに抱かれた思い出とともにこの世から旅立ちたいのです。
(百人一首56番)

07 三つ子の魂千までB



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