「ヤバイ!!!今月もピンチじゃん!!!」

私は,電卓を叩いて弾き出された数字を見て頭を抱えた。余裕があると思っていたが,いつの間にか家計は火の車だった。支出が高いものをチェックしてみる。

「次郎の酒瓶に水を入れて,酒を薄めよう。どうせ酔ってたら味などわかるまい。」
「んん???五虎退の相棒のエサ代がとんでもない額になってる!!極になっても,5匹が融合しただけで今までと変わらないと思ってたのに・・・。」
「三日月のお茶は,ペットボトルか薄〜く煮出すかどっちか。茶菓子は,砂糖を舐めさせよう。」

支出が多い物に対する対策を絞り出していくと,とんでもない物を見つけた。

「待て待て待て!!!“絹製冷え取りインナー&股引”!?三日月!こっちに来い!!!!」
「はっはっは。まだ日が高いというのに,もう伽か?よいぞ,近う寄れ。」

三日月のセクハラ発言は無視し,“絹製冷え取りインナー&股引”の説明を求めた。

「冷えには絹が良いと聞いてな。これはいいぞ。実に快適だ。」
「いやいやいや。快適だとかそういう問題じゃないから。この際はっきり言うけど,靴下履けよ。靴下履かないから冷えるんだよ!!!」
「あなや。」

三日月は,ピシッと固まった。そこへお茶を持った長谷部が現れる。

「主のお心を煩わせるなど言語道断。貴方に仇なす尽くを血祭りにあげま・・・」
「長谷部!!!!!」

長谷部が不穏な台詞を吐き終わる前に,私はお茶をグイッと飲み干し湯飲みを机に叩き付けた。

「一番支出が多かったのは,“主お世話係”であるはずのあなたです。」
「!!!何と!?主,それは何かの間違いです!!」
「極になったよね。そこまでは良い。それで,あなたは張り切りすぎた結果どうなったかな?真剣必殺やりまくったよね?それ,やるとどうなるんだっけ?」
「あ,あ,ある・・・」
「服が散り散りになるんですよ。跡形もなくね。」

そう言うと,長谷部は膝から崩れ落ちた。彼が張り切り傷つく度に,新しい服を買い直さなければならなかったのだ。皆が傷ついて帰ってくる度に,胸が押し潰されそうになるんだから。
三日月に目をやると,固まったままだった。真剣必殺の件,お前は合格だ。でも,半身晒してるのも冷え性の原因だと思うぞ。
固まったままの三日月に,靴下を買いに行くから用意してと声を掛けた。すると,パアッと桜吹雪付きの笑顔を見せ,茶菓子も頼むぞと言って自室へ去っていった。
ーーーこうなったら,もう一丁やるしかないな。


「長谷部。スライディング土下座の準備だ。」

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