よしなしごと

▽2020/05/16(Sat)
アイナナss(百)
「別れました」
「え?なんで?」
百のせい、と答えると「またあ?」と彼は目を丸くした。
眺めていた雑誌を脇に置くと、大きな手がよしよしと頭を撫でてくる。
「しょうがないなあ。百ちゃんが慰めてあげるから元気出して」
「んー・・・」
今回は付き合ってどれくらい?と彼は尋ねる。
「1か月」
「早っ」
百の顔がひきつる。
「なんでだよーこんなにいい子なのに!そう思うのは俺だけ!?」
「ありがとう。でも原因は百なんだよね」
「あ、やっぱり?」
3歳離れた兄の百と仲良すぎると言われるのはしょっちゅうだ。
そんなことないよって否定するのも疲れてきて、最近は笑って流すことが多い。
「今さら距離置かれたら俺が死んじゃうからやめてね」
そう言って、百は私の頬を両手でそっと包み込んだ。
「私だって百がいないのはいやだよ・・・でも」
「でも?」
「百には千くんがいるし」
「だって千は千だし・・・うーん」
困ったなーと百は考え込む。
「百ちゃんがふたりいればいいのに」
「え?」
「そしたら片方は千とアイドルやって、もうひとりの俺はお兄ちゃんできるのにさ。・・・それか」
なあにそれ、と思わず笑う。
「・・・やっといつもみたいに笑った」
「え、」
「ねえ、おいしいもの食べ行こ。もちろん百ちゃんの奢り」
立ち上がる百に手を引かれながらふと尋ねる。
「ねえ、」
「ん?」
「さっきなんて言おうとしたの?」
「え?さあ、なんだろう」
忘れちゃった、と笑う百。
「そっか」
「うん」
本当は血がつながってなければいいのに、なんて。
「(俺はずっと考えてるけど)」


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