よしなしごと

▽2020/05/18(Mon)
光の花園
屈託のない笑顔が好きだった。
もう会えなくなる、そう伝えた時の、ぽろぽろと涙を頬に伝わせ静かに泣く姿がいつまでも記憶から消えない。
他愛ない話をして当たり前の日々を過ごした。
何も告げずに地球に残してきた、友達のままだったあの子。
隣の席になった時は面倒だな、とそっぽを向いていたら、アイドルじゃない僕に話し掛けてきた。
別に、なんてつれない返事にも遠慮がちに食い下がったり。
嫌いじゃないかも、なんて思っていたはずがいつの間にか好きになっていた。
ずっと傍にいたかった。
いつまでも守ってあげたかった。
そんなことを思い出すたび、胸の奥の僕が疼く。
「好きだったの」
ぽつりと呟いた私に、ファイターは「きっとあの子もそうだったわ」と静かに答えた。
「それ以上に好きだったのよ」
想いを伝えることができなくても。
「(愛してたんだわ)」
涙が流れるままにまかせていると、やがてファイターは言った。
「あなた達の想いが強ければ、きっといつかもう一度逢えるわ。あの子がもっとずっと大人になってしまったとしても、今の姿でなくなったとしても」
きっとまた、どこかでいつか。
「・・・長い話ね」
淡い橙がきらきらと輝く。
僕は君が好きだった。
今でもずっと。
君の気持ちだって本当は知ってたんだ。
ごめん、ごめんね。
君を連れて行けたら良かったのに。
いつかまたどこかでなんて、まるで、
「(おとぎ話みたいじゃない)」
遠い遠い見えない青い星を、光あふれる金木犀の花園から探した。


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