ウラヌスに憧れる彼女にやきもきする話



「あー、かっこ良かったなあ・・・」
とろんとしたまなざしのなまえちゃん。
こりゃあまずいわ。
夜天くんの怒りが今にも頂点に達しかねない。
それなのに、
「なまえのいたいけな心を奪うなんて、一体どんな人だったのかしら?」
あーん、みちるさんってばやめて!
「どんなって・・・それは」
助けられた時のことを思い出したのか、なまえちゃんは頬を染める。
やだ、可愛い。・・・じゃなくて!
「怪我はないか聞いてくれて、それから・・・子猫ちゃん、って」
分かる。気持ちはとってもよく分かる。
「ですってよ、はるか」
「ふっ、そうかい・・・参るね」
そんなつもりはなかったんだけどな、なんてニヒルな微笑み、しらじらしい。
「美奈ちゃん、さっきから百面相してるって」
「だって!この状況で平気でいられるうさぎちゃんのほうがどうかしてんのよ!」
思わずひそひそと怒鳴る。
「だ、だってー・・・!」
「見てよ、夜天くんの顔!鬼!」
嫉妬と激怒に燃えた瞳に睨まれても、はるかさんは涼しいものだ。
「きっとまた会えるさ」
「そうかな・・・?」
「ああ。・・・すぐに、ね」
きゃーっ、意味深なセリフ!
「夜天、落ち着いて」
大気さんがそっと囁いた。
すると夜天くんは抑えに抑えた声で、
「・・・〜っ!ぼ、く、もっ!こないだ助けてやっただろ!」
と主張した。
うんうん、分かる分かる。あの時とーってもかっこよかったもんね。
それなのになまえちゃんたら、なぜかウラヌスに夢中なんだもん。
「ま、これが差ってやつかな」
「あ”?」
「君、仮にも彼氏でアイドルなんだろう?」
火に油、どころかマグマに石油注いじゃってる。
「悪いけど会えないよ。ていうか会わせてあげない」
きっぱりと断言する夜天くん。
「それはあんまりすぎないか?」
「うるさい星野黙れ」
「ちぇー」
「なまえ。君がピンチになったら、そんなやつなんかよりもっと強くてカッコいいやつが助けにくるから」
「それって夜天のこと?」
「そ・・・まあ、どうかな」
笑っている星野に一瞥をくれると、夜天はごまかすように咳をした。
「だけど、今度はヒーラーにお熱になっちゃうんじゃない?」
「ありえますね」
「ちょっと、やめてよそういうこと言うの」
不思議そうな顔をしている恋人に、彼がカミングアウトする日もそう遠くはないのかもしれない。


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