付き合って一年経つ彼氏がいます。
最近お外にデートした記憶はなし、あって屯所の広間でゲームしたくらい。
エッチ?未だに未経験ですがなにか?
キス?初キスはレモンの味って言うよね確か。


「お前、それマジで言ってんの?」

「銀ちゃん騙されちゃいけないネ。今日は確かエイプリルフラフープあるよ」

「いや、インディペンデンスデイじゃね?」

「もう黙れよお前ら。エイプリルフラフープでもインディペンデンスデイでもねーよ今は真夏だよ」


7月になった。
蝉が鳴く蒸し暑い昼下がりに万事屋でのんびりお茶を飲んでたら「あいつとは最近どうなの?」って銀ちゃんが訊ねてきて。ちなみに銀ちゃんの言うあいつとは私が女中のバイトをしている真選組の沖田さんの事。一番隊隊長にして私の恋人である。

どうなの?っと聞かれれば付き合いたて当初から変わらずうまくやってる。そう。全く変わらず。


「変わらずって…お前それは変わらなすぎんだろ。一年付き合ってまだ沖田くんの沖田くん見てないの?」

「銀ちゃんその言い方やめてよ。これわりとデリケートな問題」

「しかもキスすら未経験って、レモンの味って…」

「私酢昆布味のがいいアル」

「そういう問題違う」

「というか沖田さんって言ったら確か今日誕生日ですよね」

「え」

「え?」

新八くんの言葉に思わず固まる。
日捲りカレンダーを見れば今日は7月の8日、七夕の次の日だ。

「え、新八くん…それ、本当?」

「はい、近藤さんから聞いたんで多分…」

「お前彼氏の誕生日知らなかったの?ありえなくね?」

「仕方ないネ銀ちゃん初キスはレモンの味言ってるなまえが知ってるはずないヨ」

「ちょっと銀ちゃんと神楽は黙っててくんない?」

衝撃的事実に頭を抱える。
確かに銀ちゃんの言う通り沖田さんの誕生日なんて全く知りもしなかったがまさか今日だったとは。
プレゼント…今から考えてる暇はない、とりあえず近所のケーキ屋でホールケーキだけでも…ああ、ダメだあそこ予約制だ。

「うう、どーしよー…!」

「んな考える必要なくね?もうこの際プレゼントはわ、た、し、でいいじゃん」

「はあ?」

「レモンの味かどうか、いい加減ちゃんと自分で確かめてこいよ」

そう言ってグッジョブと親指を立てた銀ちゃんの髪を全部もいでやりたい。

でも一応彼女として誕生日をこのまま見過ごすのも如何なものだろうか。

「と、とりあえず!バイトもあることだし今から屯所行ってくる…」

「おまえ今日休みだろ」

「うううるさい!じゃあ屯所に忘れ物したから行ってくる!!」

「へいへい、当分帰ってこなくていーぞー」

ジャンプをペラペラする銀ちゃんをひと睨みして万事屋を後にした。
銀ちゃんの言う通りバイトは休みだが適当な理由をつけてとりあえず向かった真選組屯所。
廊下をうろうろ彷徨っていたら土方さんに遭遇して、沖田さんの居場所を聞いたら居間でドラマの再放送を観てるとのこと(働けよ)


「てかおまえ今日はバイトは休みだろ」

「わ、忘れ物をとりに…」

「忘れ物?ああ……総悟なら居間だぞ」


察したようにもう一度沖田さんの居場所を伝えて足早に去って行った土方さんになんだか無性に恥ずかしくなってきた。
やっぱ帰ろうかなと迷いが出てきてその場をぐるぐるしてると聞き慣れた声が。


「おいそこの不審者」

「え?不審者?」

「キョロキョロすんな、お前のことでィ」


ズビシ、と頭にチョップを食らった。
振り向くといつも通り頭にアイマスクをつけたままの沖田さんの姿が。


「彼女を不審者扱いしないでくださいよっ!」

「お前今日バイト休みだろィ。せっかく一日静だと思ってたんだけどねィ」

「なにおう!せっかく人がわざわざ…!」


言いかけてハッとした。
誕生日だから会いに来ましたなんて口にするのはあまりにも恥ずかしすぎる。

そもそも勢いできちゃったけど、沖田さんは人生で初めてできた恋人と呼べる大切な人なのに、恋愛レベルが著しく低い私は甘くお祝いするなんて無理だ、絶対。
グッジョブと親指を立てた銀ちゃんの姿が脳裏に浮かんで、ブンブン首を振って掻き消した私を沖田さんはほんとに不審者を見る目で見つめてきた。


「ま、暇なら相手してもらいやしょうかね」

「相手?」

「イイモン買ったんでさァ」


そう言ってニヤリと笑った沖田さんに身震いして、引かれた腕。
相手って、まさか…!?

少女漫画でしか読んだ事ない展開をあれこれ想像してるうちに、沖田さんの部屋についた。
そこにあったのは一台のゲーム機。ああ…スウ◯ッチか。ゲームねゲーム…。

銀ちゃん、私の恋愛レベルはまだまだ上がりそうにないよとほほ…。


「昨日買ったばっかりでねィ」

「へーよかったですねー」

「もっと喜びなせェ。お前が勝ったら団子奢ってやっから」

「え!マジですか!」

「チョロすぎだろィ女としてのプライドねーのか」

「プライドより団子です!!」

「そのかわり、お前負けたら今日一日俺に付き合いなせェ」


じゃあスプラで勝負な、とテレビを付けた沖田さんに最早本来の目的を完全に忘れてしまった私。

沖田さんは昨日やり込んだんだなってすぐにわかるくらい強く、結局もう一回もう一回と粘ってるうちに夜になってしまった。


「お前弱すぎでさァ」

「沖田さんが強すぎるんです!!というかそろそろ帰らないと銀ちゃんが心配する…」

「今日は泊まって行きなせェ」

「え?」

「言ったろ、負けたら一日付き合えって」

「えーでもこれ以上やったら目がチカチカしちゃいますよ」

「バカ、誰がゲームつったんでィ」


沖田さんの言葉に「へっ、」と間抜けな声を上げたのも束の間。
畳の上に座る私に覆い被さるように身を乗り出してきた沖田さんに、状況が掴めず目を瞬いた。


「今日が何の日か、覚えてるからきたんだィ」

「えええっと?今日、今日は…」

「お前が自分からこなかったら万事屋まで凸るつもりだったんで、手間が省けやした」


思わず後退りしたら、逃すまいと壁まで追い詰められて頬を掴まれ上を向かされた。
沖田さんは頬を右手でむにむにしながら「タコみてェ」と呟いてグッと顔を近づけてくる。


「あ、あの…私まだ心の準備が…!」


いざとなったらしぬほど恥ずかしい!というか展開が急すぎてついていけない、


「その心の準備とやらはいつになったら出来るんでィ。お前の小学生レベルの恋愛ペースにだいぶ合わせてやったろィ」



初キスはレモンの味が確かめてみなせェ。


押し当てられた唇に息する暇もないまま掻き乱された。
今まで沖田さんは、キスしたいとかそーゆう感情ないのかなと思ってだけど私の為に我慢してくれてたんだなと、キスのあと、唇を離した瞬間に静かに悟った。

というか、


「初キスはレモンの味だって思ってたの…なんで沖田さんが知ってんの!!あの天パか!?」


「安心しなせェ。キス以上の快楽を俺が手取り足取り教えてやりまさァ」



ちなみに初キスはお煎餅の味でした。


露草

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