「銀ちゃんお誕生日おめでとう!プレゼントはわ、た、しっ」

語尾にハートマークが付く勢いで片目を閉じパチンとウインクして愛しの銀ちゃんを見れば銀ちゃんは目を細め私の腰を抱き寄せるとそのままソファーに押し倒した。

「本当にいいわけ?」

「…うん、銀ちゃんが相手なら私っ…嫌じゃないよ?」

「じゃあ遠慮なく」


いただきます。





「銀ちゃぁあんっもう、そんなぁっ!!」

「うるせえええええ!」

「ぶわふっ」


顔面に豪速球で柔らかい何かが飛んできて私は強制的に夢の国から現実世界へと引き戻された。
目の前には寝巻き姿で額に青筋を浮かべる銀ちゃんの姿が。


「っなにするのさあ!今一番いいとこだったのに…」

「なにするじゃねーよ、それ俺の台詞!気色悪い夢に俺を登場させないでくんない?」

「っなんで私の見てた夢がわかるの?もしかして銀ちゃんもおんなじ夢を…」

「ンなわけねーだろ、全部口に出てたつーの」


プレゼントはわ、た、しとか古ぃよ。
銀ちゃんはそう言って私に投げつけた自分の枕を回収してそそくさ布団に帰っていった。

「古いかなあ…というか銀ちゃんって私以外に欲しいものあるの?」

「お前のその無駄な自信はどっから湧いてくるわけ。最早狂気なんだけど」

呆れた様な冷たい視線が刺さる。
だって私の世界は銀ちゃんを中心に回ってる、だからきっと銀ちゃんも同じかなって。むしろそうであってほしいという願いもこめて。

「残念だけど俺の世界は糖分を中心に回ってるから」

「私糖分よりランク下?」

「糖分を軸に酒とパチンコが周囲を占めて、残った部分の0.1%がなまえの居場所」

「0.1%!でも居場所があるだけ許す」

「そこ喜ぶとこ違うだろ」

月が一番高いところに登って、窓から光が差し込んできた。明るくなって銀ちゃんの顔がよく見える。さっきから銀ちゃんは呆れた顔しかしてないけど、私はずっと笑ってる気がする。

「だって嬉しいじゃん。好きな人の心に1%もいられるなんて、それだけで幸せだよ」

「…0.1%。勝手に増やすなよ」

「でも嬉しいの。銀ちゃんが生まれてきてくれた事も、今こうやって一緒にいてくれることも、すごく嬉しい」


カチカチと時計の秒針が動いて時刻は0時。
日付が変わり10月10日、銀ちゃんの誕生日になった。
同時に「お誕生日おめでとう」って笑えば銀ちゃんは小さく「…おう」と呟いた後、身体を反転させて背を向けられてしまった。…照れてるのかな。
銀ちゃんの背中を眺めながら私も自分の布団に入って。
朝になったら一緒にたくさん甘いもの食べに行って、でもって夜は新八くんと神楽とみんなでお祝いして。そんな計画を練りながら再び眠りにつこうと目を閉じたとき、布団に何かがもぞもぞ潜り込んできた。

「え。銀ちゃん…一緒に寝てくれるの?」

「寝るつーか…お前が夢で見たラブイベント。やっぱ実行してみようかなって」

「は?」

ふざけたラブイベントとか言葉を使ってるわりに銀ちゃんの瞳はいつの間にやら怪しく煌めいたいた。
予想外の展開に息を飲み、身体を強張らせながら身を捩れば銀ちゃんの口角がニッと釣り上がる。…なんか、いつの間にか入ってる。ドSスイッチ。

「あんなこと自分から言ってたくせに攻められるのに弱いよななまえって。今更逃す気ないけど」

「だ、だってっ急だし、銀ちゃんこそどんな心境の変化!?ね、ちちちちかいって」

「いーね。そーいう反応の方がいじめ甲斐ある」

困惑する私の両手を布団に押し付け上に覆い被さってきた銀ちゃん。はだけた着物から覗く引き締まった胸板が眩しいというか最早目の毒である。

「プレゼントはわたし、だっけ?」

「…違う。わ、た、し…だけど」

「そうか。じゃあ遠慮なくもらっとくわ」

「まままっへ、返品も可能ですよ?」

「さっきまでの威勢はどうしたよ」

目を細めて私の唇を塞いだ銀ちゃん。
夢とは違うリアルな感触、舌触りに頭がくらくらした。
涙目になる私の顔を見て満足気に口元を緩めた銀ちゃんは濡れた唇を真っ赤な舌でぺろりと舐めあげて

「その気にさせた責任、ちゃんととってね。なまえちゃん」

「いただきます」と呟いた銀ちゃんの姿は夢とリンクしたのにとても生々しく、普段は死んでるのにギラギラと輝いているその瞳が現実であることを物語っていたのであった。

露草

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