近藤さんが出張行った時のお土産ってさくらんぼを買ってきてくれた。
丁度小腹が空いてきた事もあり私は馬鹿みたいに喜んで、そしたら騒ぎを聞きつけたであろう沖田さんが現れた。
案の定というかなんというか、同じく小腹が空いてるであろう沖田さんもさくらんぼを欲しがって取り合いになった。
見かねた近藤さんが私達の間に割って入って、結局私達は今、近藤さんによって二等分に分けられたさくらんぼを仲良く縁側で食べている。
本当は全部独り占めしたかったけど、まあいい。
癖になりそうな甘酸っぱさに頬を緩めながら私はもう一つさくらんぼを口にした。
「美味しいですね」
「種がなきゃもっといいけどな」
ぺっと地面に種を吐き出す沖田さんにお行儀悪いですよと注意を促すが本人全く聞いてない。仕方ないので私は種に土を被せといた。
「さくらんぼの種に土被せても芽がでるとは限んねーぞ」
「こうでもしとかないとカラスとか寄ってきちゃうから埋めたんです」
「へー」
「あ、ちょっとだからもう種飛ばさないで下さいって!」
「種があったら飛ばす、それが江戸っ子でさァ」
「知りませんそんな定義」
「お前だってスイカの種一度くらい飛ばしたことあんだろィ」
「女の子はそんなはしたない事しないんです」
「え、お前が女…?」
「なに衝撃受けてるんですか、女じゃなかったら何に見えるんですか!」
「ジャイ子?」
「ジャイ子だって立派な女の子ですから!」
私にもジャイ子にも超失礼な事言う沖田さんを睨むと沖田さんは平然とさくらんぼのヘタを口に入れて、
「え、ちょっと沖田さん?いくらなんでもヘタは食べれませんよ?」
そんなお腹空いてるんですか?っと問いかけたら「ちげェよ馬鹿」とチョップを食らった。
「これはアレでさァ」
何やらもごもご口を動かす沖田さん。
それを見てピンときた。
これさくらんぼのヘタを結ぶやつだ。
「確かさくらんぼのヘタを口の中で結べる人はキス上手なんですよね」
「ん、そう」
「沖田さん出来るんですか?」
「当たり前だろィ」
でも確かに沖田さんって変に器用な所あるもんな。
しかもドSだから攻めてくるタイプだし、それに何よりいつだってたったキス一つで私の大切な何か、余裕とか気持ち的なモノ全部持ってて骨抜きにされちゃうし。
沖田さんって可愛い顔してやること大胆でキスは意外と毎回激しかったり…、
「なんでィ」
「いやっ!なんでもないです!」
考えてるうちに無意識に沖田さんを凝視していたらしい。
私は慌てて視線をさっき沖田さんが飛ばして無造作に地面に転がってる種に向けた。
ちょっと余計な事考えすぎた。
思わず顔に集中した熱を冷ます様に手で扇いでたら種にスズメが寄ってくるのが見えた。
…ほら、言わんこっちゃない。
次々と寄ってきて小さなくちばしで種を突つくスズメ達を暫く眺め、熱が引いてきた所で再び沖田さんに目を向ける。
「沖田さん、できました?」
「……うるせェ」
どうやら苦戦中のようだ。
「無理しなくていいんじゃないですか?下手でも私は引きませんよヘタだけに」
「だれが下手だ、つーかそのギャグ寒ィ」
沖田さんの眉間に皺が寄る。
「第一これはちょっと長さが足りなかっただけでィ」
「それ関係あるんですか?」
「大有りでさァ」
「でも上手い人は短かくても結べるもんじゃないんですか?中には二重結びできる人もいるみたいですし」
「…………」
あ、黙った。
沖田さんって変に意地はる所があるから、そこをからかうのがちょっと面白かったりする。日頃意地悪ばっかされてる仕返しだ。
でも、ちょっと調子乗ってからかいすぎると、
「大丈夫ですって。キスが下手でも人間生きてけますか、ら?」
がしっと突然掴まれた右腕。それを強引に引かれたと思ったら私達の距離はなくなって、唇がくっついた。
「っん、っん!」
ちょっと言い過ぎたのか、どうやら機嫌を損ねたらしい。
舌を絡め散々口内を犯した後、私が弱いの知っててわざとらしく唇をなぞるからほんとタチ悪い。
「で、だァれがキス下手なんだって?」
唇を離して茹で蛸みたいになる私を見て満足気に笑みを浮かべる沖田さんに、結局白旗をあげたのは私の方だった。
上手い下手関係なしに彼のキスは私にとって甘い毒。
露草
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