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「は…?バレてる?」
「うん。」

昨日少し様子が変だったスガに何かあったのかと部室で尋ねると思いも寄らない返答が返ってきた。
その場にいた部員全員が着替える手を止めてスガを振り返る。
しかし、当の本人は衝撃的な発言をかましたのにも関わらず着々とジャージに着替えていた。

「……え、バレたって…」
「うん。だから俺が吸血鬼ってバレてた。」
「えぇぇええええええッッ!!?いいのそれ!?大丈夫なの!!?」
「ちょ、旭。耳元で叫ばないでよ。」
「いやいやいやいや!!それ一大事っスよ!!菅原さん!!」
「ちょっ…田中引っ張るなって…ッ」
「そーすよそーすよ!!!もし周りに言い触らされたりなんかしたら…ッッ!!」
「そそそそれはヤバいです!!嫌です!!!ダメです!!!」
「取り敢えず田中と西谷と日向は一回深呼吸しとけ。」

言われた通りに大きく深呼吸をし始める三人を確認してスガを振り返る。
こちら側としても説明を求めたいところだし、状況を把握したいのだが、何故か焦る素振りを微塵も見せないスガに、少し安心する。

思っているよりも事は深刻じゃないのだろうか。
着替え終わり部室を出て行こうとするスガを追いかける。
後ろから慌てたようについてくる旭を視界の端に入れながら、俺は至っていつも通りなスガの背中に声を掛けた。

「なぁスガ。バレたって本当か?」
「うん。本当。吸血しようとしたら見られたんだ。」
「はっ!!?見られた!?ていうか学校で吸血しようとか何考えてるのスガ!!!」
「…いや、だってその子が吸血鬼は存在するんだよって熱弁してるから、いいかなって。」
「いいかなじゃないよぉぉぉぉおおお!!その吸血しようとしたとこ見られちゃったんデショ!!?」
「旭、黙れ。」
「えぇええええ!!?」

睨むとその図体に似合わない悲鳴と共に一歩足を引く。
ヒゲちょこめ。
もう一度スガを振り向くと顎に手を添え何かを思案するように眉間に皺を寄せていた。
少し唸った後、ようやく口を開く。

「…いや、多分あれは吸血する前から俺が吸血鬼だって知ってたんだと思う。」
「え…っ」

その発言に俺は目を見張り、旭は息を呑んだ。
吸血鬼だとバレていた?
それを聞いてしまうといよいよ安心できない事態になってくる。

吸血鬼だとバレているのはスガだけ?
俺達3年も含まれるのか?
それともバレー部員全員だとバレているのか?

嫌に鼓動が五月蝿い。
冷えた汗が体を伝っていく。

後ろから走ってやってきた1、2年も静かにこちらを窺っているのが分かる。
二の句を繋げないでいると、スガは振り向き、ニッと笑った。

「ま、大丈夫だべ!」
「…は。」

拍子抜けして声が漏れる。
何が大丈夫なのだろうか。
彼が笑って大丈夫、と言うと漠然とした安心感が漂うのだが、一体何故そう言い切れるのか。
言い触らされでもしたら居心地が悪くなるのは間違いない。
それが非現実的だと信じられないとしてもだ。
何とも言えずにその笑顔を見返しているとスガは困ったように頬を掻いた。

「根拠はないんだけど…その子、誰にも言ってないみたいだし。」
「…え。誰にも?」
「うん。誰にも。それに…その。俺が吸血しようとした子にも黙っててくれて。しかも俺が襲った事、誤魔化してくれたみたいで。」
「は…え、そ、そんな誤魔化すとかそんな簡単に出来るもんなんスか?」

険しい表情の影山の言葉に確かにと頷いた。
正体を晒しているのを誤魔化すなんて。確かに意識はなくなっていたかもしれないけれど、その前後を誤魔化すことは難しいはずだ。
するとスガは俺達同様に首を傾げた。

「それが謎なんだよね。どうやってやったんだろう。それに術も効かなかったんだよね、その子。」
「え!!?術が効かない!!?」

日向が驚いて声を上げる。
それは皆似たような反応で、驚愕と困惑が一瞬にして広がった。
術が効かない、なんて。普通の人間では有り得ない筈だ。
しかも人の記憶を誤魔化すなんて。吸血鬼であることも以前から知っていたというし、もしかしたら、人じゃない…?

各々沈思しているのか会話がなくなる。
いつもは騒ぎそうなメンバーでさえ術が効かないという言葉を耳にしてから押し黙ってしまった。
唸る俺達を尻目に、月島がいつもと何ら変わらない表情で言い切った。

「その人も吸血鬼なんじゃないですか?」

その言葉に一瞬固まって。
間を置いた後、あ。と誰かが呟いた。

「そっか!!同じなら術通じねぇしな!!!」
「なるほど!!やるな月島!!」
「いや、別に…」
「ツッキーさすが!!」
「くっ…お、俺だってそう言おうと思ってたんだ!」
「え?本当に?」
「ぐぬぬぬっ」

安心したように笑いあう後輩達を視界に捉えながら、それでも思案しているスガをじっと見る。
まだ何か考えるところがあるようなそれに、不安は完全には取り除かれない。
彼の口から出る言葉を旭と急かさず待っていると、ようやく口を開いた。

「…ちょっと、吸血鬼とは違う気がするんだよね…」
「…具体的には?」
「うーん…なんとも言い難いんだけどさ…。だってその子が俺の事吸血鬼って気付いてたなら、俺も何かしら感じててもいいじゃん?でも俺は何も感じなかったし……本当、普通の子なんだよ。何も感じない。普通の、人間って感じ。」

不思議そうに首を傾げるスガに、俺達2人もまた首を傾げた。

「スガ。その子の名前は?」
「九条 穂積さんだよ。」
「…エッ?」
「何?大地知り合い?」
「いや…、」

思いも寄らない名前に動揺すると、旭に顔を覗き込まれる。
まさかという思いでスガを見ると、あ、そうか。と一つ頷かれた。

「大地仲良かったじゃん!九条さんと!!」
「えぇぇえっ」



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