乾杯




勝己は、大口を開けてホッケの開きを口に放り込む。私は、キンキンに冷えたサワーを飲む。「で、勝己のわがままに振り回されて北の大地まで来たのだけど...。なんかあったの」「なんもねぇよ」勝己は、ジョッキに半分くらい残ったビールを一気に飲み干して「生!」と叫ぶ。隣のテーブルを片付けていた店員さんが「はぁい!」と返事をする。テーブルに並んだ、ザンギや枝豆がどんどん減って行く。すぐに、可愛らしい店員さんがビールを持って来る。「なんかあったのは、お前の方だろ」「...うーん」思い当たる節がないわけではない。仕事がうまくいかないとか、人間関係がちょっとしんどいとか、色々心配ごとが多いだとかなんだかんだ。「勝己は、心配してくれてたわけだ」「...ちげーよ」素直じゃない、勝己のジョッキに勝手に乾杯をする。「ありがとねー」勝己は、小さく「おう」とだけ言って、届けられたばかりのビールを飲み干す。「明日はどこ行こうかー」忙しい勝己が、私を心配して「休みとれ」と誘ってくれたことがただただ嬉しい。家に、現実に戻るまではきっと許してくれるだろうから、少しくらい勝己に甘えてみよう。





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