インソムニア



「ごめんね...」天喰くんは、少し困ったような顔をする。わたしが夢みた、お伽噺のような世界はまるでチョコレィトのように甘ったるかったのに、今目の前の世界は、そんなことはなくて。王子の登場を待っているだけではだめだと、踏み出したことが良いのか悪いのか、わたしにはわからない。天喰くんがくれた笑顔を、目を瞑って瞳の奥に焼き付けた。彼と過ごした、毎日が足を竦ませた。全部を知っていたけど、全部を理解していたけど、わたしは何も知らないフリをして。云いたくて、云えなかった言葉が、天喰くんにふられてく。ずっと、ずっと、夢みていた。それも、今日のこの瞬間までで。見上げた空は雲ひとつない青空が、擦り剥いた心に沁みてく...。

(chocolate insomnia)




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