茹だる暑さの中、身体が溶けてしまいそうな感覚に陥りながらボールを追いかける。もう、動けなくなるとくたくたになった所で、休憩の合図が出た。「あちー」「嘆いたって、暑いことには変わらないだろ」「そうっすけどー」「夏ってきらい」「季節はやっぱ、春が1番だよな」「春は花粉が飛ぶからだめ」「お前、花粉症だっけか」部員たちの雑談を耳にしながら、ふと夏休みに入る前に同じような会話をしたことを思い出す。彼女と会わなくなって、1週間が過ぎた...。「私?私は夏が好き」「なんか意外」「意外ってなに、意外って」彼女は、何がおかしかったのか、ケラケラと笑う。「だって、夏って独特の解放感があるし」「あー、なんかわかるかも」「あれ、なんなんだろうね。あとさ、夏はなんでも出来そうな気がする」「なんでも?」「なんでも。根拠も理由もないんだけど、なんとなく、そんな気分になる。なんでだろう」顎に手を当てて、うーんと首を傾げる彼女。一緒になって少し考えてみるが、どれだけ考えても俺にはその解答を見つけることはできないような気がした。





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