猛暑日


「こんにちはー」開け放たれた扉から見知った顔が覗き込む。彼女の後ろにも数人。「どした?」俺は彼女の元へ駆け寄る。「あ、黒尾くん。練習中ごめんね、ちょっといいかな」各校の部長とマネージャー、もしくは代理人を呼んでくれという彼女に従って、合同練習に来ている梟谷と生川、森然に声をかける。「はじめまして、こんにちは。音駒高校生徒会会長です。練習中に少しだけお時間ください」生徒会長が挨拶をしている間に、会計の腕章を付けた男子生徒がプリントを配る。書記の女子がバインダーになにかをメモる。「今年は、まだ7月ですが真夏日どころか猛暑となっております。全国で、熱中症が多く出ているため、我が校では熱中症ゼロ対策を始めました。皆さまも、意識的に水分補給と休憩をとってください。簡易的な手作りのものですが、生徒会室でも経口補給液と材料の砂糖と塩の準備をしておりますので、9時から18時の間で、必要がありましたら遠慮なくお声がけください」さっき配られたプリントに目を落とすと、熱中症の予防方法と手作り経口補給液の作り方が載っている。彼女が作ったものだろう。俺は、なんとなくそう思う。「ご質問等ございますか?」梟谷のマネが手をあげる。「対応時間外にも練習するんですが、材料を分けていただくことは可能ですか?」「砂糖は使用量が多く、運動部文化部共に活動も多いため、多くは提供できませんが、ある程度なら可能なので後でお持ちいたします」他になければ、と言ったところで全員が首を横に振る。「では、失礼いたします。よろしくお願いいたします」生徒会長が頭を下げて「行こっか」と後ろに声をかける。「山本!未開封のペットボトルあったろ。3本持って来てくれ」すぐに反応して、走って来た山本からペットボトルを受け取って、彼女にそれを渡す。「張り切りすぎて、生徒会長がぶっ倒れたら示しがすかねーダロ」夏はまだまだ、これから。





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