フォルトゥーナの吐息



「そしたら、あの男なんて言ったと思う?後輩の男とふたりで、一晩一緒に寝たとか信じられない。何で、わざわざ俺の嫌がることするの?だって、バカバカしい。そのくせ私が、何で女の子とふたりで夜ドライブしたの?デート?って言ったら、その子の相談を聞いてたんだ。ときた。その相談も、先輩ふたりに言い寄られてて。とか、相手が共通の先輩だからって仮にも友達の彼氏を夜中に呼び出してドライブしながらする話?しかも、何回も。私が、夜間の防衛任務に勤しんでる間に。それは別件だから今は置いといて。私に対して嫌なことを先にしたのそっちでしょ?って怒ったら、やましい事はしてないし、ただの友達だし。とか言いやがる。こっちだって、任務の後に作戦室で喋ってたら寝落ちしただけなんですけど?ただの後輩と。いや、太刀川君は大事な後輩だよ?だからって、お互い相手の嫌なことをしたのに、自分は悪くない、お前のは度がすぎる。なんて、都合良すぎでしょ。腹が立ったから、夜間の任務入れまくったわけ。全部、後輩の男の子と。って、実際は太刀川君以外の人も居たんだけど、わざとそうやって約束断り続けたら話がしたい、とかドライブ誘ってきて、その後輩の事は知らないけどやっぱり君が好きだから。と。いやいや、もう手遅れなんでさようならだよね、そんな奴」

一気に、そう言い放ったジュンさんは、大きくため息を吐く。
だから最近、やけにジュンさんの任務に後輩の男の名前が多かったわけか。
と言うか、話を聞く限り事の発端って...。

「もしかして、俺のせいで別れた?」
「ああ、いやいや。太刀川君は悪くないよ。確かに、あいつはそう言ったけど、別に関係ないもん。勝手に天秤に乗せてきたのはあっちだし」

ジュンさんはカップに入った、コーヒーを飲む。
湯気なんてとっくに消えてしまった、冷めたコーヒーを。
どうも、最近元気がないと言うか、逆に元気があると言うか、先輩後輩男女関係なく色んな人に絡みに行ってると思ったらこれだ。
最近、彼氏と別れたんだって?とボーダー内で耳にした噂をなんとなく聞いてみたら、ラウンジで放たれたマシンガントーク。

「太刀川君にまで、そんな話がたどり着いちゃってるんだ」
「噂は、本当なんだ」
「まぁね...」

そんなに、彼氏と何した何処に行ったなんて話すタイプではなかったし、上手くいっているものだと勝手に思い込んでいた。
俺よりひとつ歳上のジュンさんには、ボーダー内でも密かにファンが居たが、相手は同じ大学の同級生でボーダーには所属していなかった為、俺たちがそれに気づいた時にはもう付き合って数ヶ月は経っていて、相手は誰だどんな奴だ、トリガーでぶった切ってもいいか、と話題になったのも懐かしいくらい。

「相手から告白されたんだっけ?」
「あはは、話した記憶はないけどそんなことまで知ってるの」

「もしかして、太刀川君のサイドエフェクト?それ」とジュンさんは笑う。

「別れたって話、そこそこ話題になってる」

付き合い始めた、と言う話よりも。とは声に出さないけど。

「さてと、そろそろ防衛任務の時間だね。太刀川君も一緒だったっけ。がんばろっか」

ジュンさんが、カップを持って立ち上がる。

「なんか、強い奴が来るといいな」
「不謹慎だねー。何もないのが1番だよ」

ほんのちょっと、興味本位で聞いただけだったのに「時間ある?」と言われ、防衛任務まで付き合うことにしたらこの結果。
思った以上に、重たい話で俺にとってはラッキーな話だった。





(WTの再開が楽しみ...)






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