やさしさ



「私たちって、なんなのかな」「なに?急に」彼女が、項垂れている。湯気の消えた、ホットコーヒーのカップを両手で大事そうに抱えたまま。「軍人、とか?」「まぁ、似たようなものかもしれないな」「そっか」帰ってきた彼女が、こうなることはおれには見えてた。なんて、声をかけたらいいか考えていたけど、実際に会ってみるとどの言葉も喉の奥に飲み込んでしまった。「心なんてない、神さまなら良かったのに」「君が?神さまか」もし、君が神さまだったとしたら、どんな世界を作るのか。きっと、争いのない優しい世界なんだろう。「遠征は、近界は楽しくなかった?」「楽しかった。ワクワクしたし、綺麗だった。でも...」「でも?」「なんで、戦わなきゃいけなかったんだろう、って」「そうか。でも、おれ達は、おれ達の世界を守るために戦っている」「そうだね」小さく、息を吐いてから彼女は冷たくなってしまっただろうコーヒーを、一気に飲み干す。「よし!もう大丈夫」「なら良かった」遠征で、彼女が何を見て、経験して感じたのか、おれにはまだ詳しくはわからないけど、彼女に笑顔が戻って良かったと思う。「迅、お土産がわりに模擬戦付き合ってよ」「実力派エリートは忙しいんだけどな。お土産なら仕方ないな」





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