仮面の裏側



水無月ジュン。
3年F組に所属する立海大附属中学の生徒会副会長。
新聞部で、生徒会の記事を書くにあたって彼女にインタビューを試みようとしたが、以前の記事で水無月さんへのインタビューは行なってしまっているので、今回は彼女の周りの人にインタビューをしてみようと思う。

「水無月さん、頭も良くて美人でいい人だよ。それでいて、とても優しいの。この前も、中間テストの勉強を見てくれたんだけど、すっごくわかりやすくて。初めてテストを自信持って提出できたわ」(3年F組女子生徒)

「俺、2年の時に同じクラスだったけど、文化祭でコーラスやってさ。水無月って、歌も上手いんだぜ。自分のパートじゃなくても、躓いてる人がいたら完璧に歌い上げて教えてて、アレで全員の士気が上がった気がする」(3年B組男子生徒)

「体育祭でのリレー、アンカーで3番目だったのに、全員ごぼう抜きしてたの凄く覚えてます。水無月先輩も、流石に運動部には勝てない。なんて笑ってましたけど、他の競技でも活躍されてましたし、運動も得意でカッコいいですよね」(2年E組女子生徒)

「ジュンちゃん、1年の時に同じクラスだった男テニの真田くんと柳くんと今でも仲良くて一緒に居る所をよく見かけるけど、なんかあのキャリアウーマンネタの芸人さんみたいな雰囲気あるよね。美人が高身長の男子2人に挟まれてるの、凄く絵になるっていうか」(3年A組女子生徒)

「球技大会でバレーに出てるの見たんですけど、バレー部じゃないんですね。水無月さんのサーブは凄い綺麗で、びっくりしました。レシーブも上手かったです」(1年C組男子生徒)

「正直に、同じクラスで生徒会の柳が僕は羨ましいよ。でも、水無月さんに釣り合う男って言われたら柳しか思いつかない」(3年B組男子生徒)

「ジュンと書記の柳くんの関係、アレ絶対怪しいよね。友達との噂になってるんだけど。でも、柳くんも頭いいし運動できるし、お似合いどころか運命の相手はお互いしかいない!って感じじゃん?デートとか、どこ行くんだろう。休日も、図書館で2人勉強会とか?あたしらには理解できないけどね。でも、映画見て喫茶店とかそれっぽいかも。(以下、編集により割愛)」(3年D組女子生徒)




俺は、読み終えた校内新聞を折りたたむ。

「何読んでたの?」
「容姿端麗、才色兼備、雲中白鶴な副会長の記事だ」
「ん?それって、数ヶ月前の?」
「いや、今月のやつだ」
「なにそれ、知らない」

俺の部屋で、ごろりと転がっているジュンに新聞を渡す。
彼女を褒め称える言葉が並んでいたが、彼らが人の部屋でTシャツに短パンといったラフな格好で、寝転がっているジュンを見たらどう思うのだろうか。

「うんうん、いい感じじゃない」
「お前の理想通りか」
「まぁ、そんなとこね。この、柳くんとお似合いってのがいい感じだわ」
「最初、俺を目標にしていると言っていたな」

ジュンは自分の記事だけを読んで、ぽいと放り投げる。
生徒会室では「使ったものはちゃんと元の位置に、新しいものは所定の位置に。整理整頓して」等と言っているが、オフになると一気にこれだ。
仁王に引けを取らない詐欺師だな。

「だって、今までも優等生やってきたのはいたけど、中学に入って柳なんて完璧超人に出会っちゃったのが不幸の始まりよ。私なんて霞んじゃうじゃない。そんなの、私が嫌。使えるモノは使わなきゃだし」

彼女が、1年で同じクラスになった時に俺をどんな風に思っていたかは聞いていないが、生徒会で一緒になってしばらくしてから「私は、貴方を超える」と宣言してきた事が懐かしい。

「何、ニヤついてるの」
「いや、そんなつもりはなかったがな。この、ダラけきったお前を見て、周りはどう思うのかと考えたらな」
「今更、そんな簡単に油断すると思う?」

今、俺の前で油断しているのはお前だろう。という言葉を飲み込む。

「さて、完璧な私でいるためにお勉強会しましょうか」





(裏のある優等生キャラがすき)






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