パンケーキ




白を基調としたおしゃれなカフェで、ほんのりとレモンが香る水に口をつける。オルゴールアレンジの曲が控えめに店内を彩る。「お待たせしました。チョコレートパンケーキとアイスティ、コーヒーです」わたしたちのテーブルに、注文品が並べられる。見るからにふわふわしたパンケーキの上でチョコがとろりと溶ける。「いただきます」分厚いパンケーキにナイフを入れて口の中へ。甘さが少し抑えられたパンケーキはチョコとぶつかることなく、混ざり合う。夢中になって、1枚をペロリと食べてしまう。「で、勝己は何処か行きたいとこでもあるの?」終始無言で、わたしを見ていた勝己に話しかける。勝己が持つカップからは、温かいコーヒーの湯気がふわわふわと揺れる。「あ?別になんもねーよ」相変わらずの悪い目つきと目が合う。「用事もなく、わたしがパンケーキ食べるとこ見に来たの...」勝己とは、いずくんと一緒でちっちゃい頃からの付き合いだけれど、時々、何がしたいのかわからなくなる。「これなら、いずくんも誘えばよかったな」「はぁ?」口では文句ばかりを言うけど、心の底からいずくんを嫌っているわけではないって、わたしは知っている。「はいはい、わたしとふたりが良かったのね」勝己の舌打ちが聞こえる。本音はわからないけど、長い付き合いからの推理だとこれは多分、ただの暇つぶしだ。「ほら」2枚目のパンケーキをひとくちサイズに切って、勝己に差し出す。勝己は、眉間にシワを寄せながらそれを食べる。「ねぇ、作れそう?」勝己は、んーと少し考えた後「多分な」と言う。「じゃ、今度は勝己の家でカフェだね」勝己は何も言わない。これは、肯定。幼馴染の確信。





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