拍手Thanks


《 忍たま世界に転生してた元人間の白猫 》

皆さんこんにちは。今日はぽかぽか陽気で最高のお昼寝日和ですね。こんな日は日当たりの良い縁側でまったりと寛ぐのが一番です。…あ、すみません。自己紹介がまだでしたね。私の名前は小雪と申します。私を拾って下さった主さんがつけてくれた大切な名前です。実は私、元人間の白猫でして、前世で不幸にも早死にしてしまい、気付いたら子猫として生まれ変わっていたんです。途方に暮れて彷徨い、空腹で行き倒れていた時に主さんに介抱されそのまま飼って頂ける事になりました。命の恩人である主さんに少しでもご恩を返そうと、私は主さんの言う事を聞いてきました。犬ならまだしも、猫である私が素直に従い言葉を理解する行動を取る様を、最初は驚いておりました。けれど気味悪がる事なく変わらず大切にして下さる主さんは、本当に良い人で私は大好きです。…たまにお得意の思いつきに振り回されて苦労はしますが、そこはご愛嬌です。私の先輩であるヘムヘムさんも、主さんの事を誇りに思っているとおっしゃっていました。流石に本人には恥ずかしくて言ってはいませんでしたが。そしてヘムヘムさんも私の尊敬する先輩で、とても優しい犬さんなんです。優秀なのは勿論ですが、何より主さんや学園の皆さんとコミュニケーションが取れるので、憧れでもあり羨ましくもあります。私は元人間である前世の記憶のおかげか、言葉は理解出来るんです。けれど話す事はどうしても出来なくて、昔はよく落ち込んでいました。その度に先輩や主さん、そして此処の人達の優しさに励まされ、今ではもう気にする事をやめました。

「おーい、小雪ー。何処におるんじゃー?」
『! にゃーう!(はーい!)』

懐かしい記憶を思い出していれば、主さんが私を呼んでいるようです。主さんのお部屋の縁側にいた私は返事をすると、一度障子の前で座って主さんの許可を待ちます。猫とはいえ元人間の記憶を持つ私には、易々と無礼に部屋へ入る事に抵抗があります。なので例え障子が開いていようと必ず止まり、一声鳴いて許しを得てから入室します。

「ほっほっ、相変わらず礼儀正しいのうお前さん。」
『にゃー。(何か御用でしょうか。)』
「この手紙を土井先生に届けてくれんかのう。」
『にゃあん!(了解です!)』

一通の手紙を見せてきた主さんは私が返事をすると、小さな風呂敷にその手紙を包み私の背中へと結びます。私に何かを運んでもらう時は、いつもこの方法でお届けしています。風呂敷も私専用のモノで、赤い布地に白い肉球模様が控えめに散りばめられた、とても可愛らしい風呂敷なんです。因みに私は首輪代わりにスカーフをつけているのですが、それも同じ色合いでワンポイントに肉球が施された私の宝物です。主さんに頼んだぞと送り出されて、私は土井先生を探しに歩き出します。まだ授業中であるから、きっと一年は組の教室にいる筈です。スムーズに目的地へと到着すると、私は扉の前で一鳴きします。すると鳴き終わる前に扉が開き、土井先生が私を迎え入れて下さいました。きっと私が来た事が気配で分かっていたのでしょう。私の姿を見つけた途端、生徒達から声が上がりました。嬉しそうに名を呼ばれれば勿論嫌な気はせず、それに応えるように一鳴きして尻尾を振ります。

「小雪、お使いありがとう。ご苦労様。」
『にゃーう!(どう致しまして!)』

しゃがんで手紙を受け取り、土井先生は優しく私の頭を撫でて下さいました。それと同時に鐘の音が聞こえてきたので、今日の授業はこれで終わりのようです。号令を終えると直ぐ様生徒達に囲まれ、私を構おうと次々に撫でていきます。偉いねーと皆から褒められて、とてもくすぐったい気持ちになりました。私を撫でて満足したのか、それぞれ思い思いに放課後を過ごそうと動き出します。そんな中、最後まで私の側にいた乱太郎君きり丸君しんべヱ君が、一緒にお昼寝しようと誘って下さいました。この後は自由にして良いと言われていた私は、乱太郎君の抱っこに身を委ねながら了承の返事をしました。道中きり丸君に喉元を撫でられ、ついつい喉を鳴らしてしまいます。気持ち良さに浸っていたらいつの間にか着いていたらしく、そっと芝生に降ろされます。川の字になって寝転ぶ三人は暫く談笑していましたが、次第に口数が減っていき気付けばあっという間に眠ってしました。その姿に可愛いなぁと思いながら、私もぽかぽか陽気に誘われて自然と寝る体勢に入りました。乱太郎君の頭の近くで身を丸めると、直ぐに眠気が襲ってきます。今日もとても穏やかで平和な一日に、私は改めて幸せだなぁと感じました。

主さん、あの時私を拾って下さり本当に本当にありがとうございます。

私、凄く幸せモノです。



top