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「あ゙ぁ゙ぁ゙あ゙あ゙ア゙ア゙ぁ゙あアァ゙あ゙あ゙ああ゙ああ゙あ゙ァぁあア゙ア゙あ゙ぁぁあ゙ああ゙ァア゙ア゙ぁ゙あ゙あ゙ぁァ゙あ゙あ゙あ゙ァ゙ぁぁ゙ア゙アア゙ぁあ゙あ゙あ゙ぁ゙ぁ゙あ゙ア゙あ゙ぁあ゙アァ゙あ゙あァ゙あ゙ア゙あ゙ア゙ァぁ゙あ゙あ゙あ゙ぁ゙ぁあ゙ァあ゙ぁ゙ぁ゙ッッッッッ!!!!!!!!!」



「止めろっっ!!兵助っっ!!!!落ち着けっっ!!!!!」
「あ゙ぁ゙ァ゙あ゙あぁ゙あ゙あ゙ァ゙アァ゙あ゙あ゙ァっっ!!!!!はなせえぇええっっッ!!!!!!」
「八っ!!兵助をしっかり抑えとけよっ!!!」
「ゔあ゙あ゙ァア゙あ゙ぁあ゙あ゙ァァ゙あ゙ア゙あ゙ァぁ゙あ゙ァ゙あ゙ぁああ゙ア゙あ゙ァあ゙ァ゙ああ゙ぁ゙っっッッッ!!!!!!」
「っ!!!!!!」
「八左ヱ門っっ!!!!」
「っ!!平気だ!!雷蔵っ、三郎、勘右衛門っ!!早くっっ!!!!」
「っ分かった…っ!!!」
「あぁ…っ!!!」
「兵助っ…!!!」


突如狂ったように叫び始めた声の元へと駆けつければ、そこには兵助が膝から崩れ落ちて蹲っている姿があった。そして蹲っていたかと思えば急に上体を起こし、兵助は手にしていたクナイで自身を傷付けようとし始めた。寸前の所で八がそれを阻止すると、八は兵助を後ろから押さえ付ける。三郎と勘右衛門が素早く薬を用意するが、その間も兵助は激しく暴れ脱け出そうとする。その際に兵助が振り回すクナイが八の頬を掠め、思わず雷蔵が声を上げた。八は痛みに構わず三郎達を急かし、雷蔵と勘右衛門は八と一緒に兵助を無理矢理抑え込んだ。その隙に三郎が兵助の腕に薬を塗った針を射し込む。
すると、徐々に兵助の動きが鈍くなり最後にはぐったりと力を抜かして八に寄りかかっていた。兵助から穏やかな寝息を聞きとると、八達はホッと安堵の息をついた。

「はぁ…危なかったな…。」
「八、手当てするよ。」
「俺が兵助を部屋へ運んどくよ。」
「私も手伝おう。」
「サンキュー、雷蔵。悪いな勘右衛門、三郎。頼んだ。」

勘右衛門と三郎が兵助を背負って長屋へと遠ざかるのを見送ってから、雷蔵は今や必需品と化した簡易の治療セットを取り出した。

今みたいに突然発狂し出す事は別に珍しい事ではなかった。
それは兵助だけに限っての事ではなくて、八も、三郎も勘右衛門も、そして雷蔵も、何の前触れもなく突如発狂し始める。
狂ったように声を荒げ、自傷行為を繰り返す。
その都度正気を保っている誰かが押さえ付けては、睡眠薬で強制的に眠らせ落ち着かせていた。
これでも、以前よりかは大分ましな“日常”を過ごせている方なのだ。

――あの日、天女から目を醒ました当初は、今の比ではなかった。

先生方が数人がかりで抑え込み、自殺せぬようにと手足を縛りあげ、舌を咬み千切らぬようにとくつわを嵌められ、一切の自由を奪われていた。その姿からすれば、五年生は幾分か精神が安定してきていた。
だがそれでも油断は出来ず、こうして唐突に精神が錯乱する。
それはきっと、この先もずっと続いていくのだろう。
それほどまでに、あの過ちは重く重くのし掛かり、永遠の“業”として背負い続けるだろう。



「………ん……あれ、俺…、」
「あ、兵助。目が覚めたんだね。」
「勘ちゃん、俺……、」
「兵助!もう大丈夫か?」
「あ、八……。その傷、俺が……ごめん。」
「気にすんなよ!こんくらいどーって事ねーよ!」
「皆も、すまなかった…。」
「兵助、謝らないでよ。八の言う通り、僕達は気にしてないから。」
「お互い様、だろう?」
「…そうだな。」

目覚めた兵助の様子を窺って、八達は笑顔を向ける。
兵助もつられるように小さく笑って、皆と一緒に歩き出した。



今やこれが、当たり前のように繰り返している“日常”。

浮かぶ笑顔は、ちゃんと笑っている。

ちゃんと、感情のままに笑っているのに、何故だか不思議と、笑えていないようにも感じられた。


その笑顔には“何か”が欠落している。


その“何か”とは、何なのか。


僕達は、それを痛い程良く知っている。



それは―― “ ##NAME2##



もう二度とこの手に掴めぬその光は、隣で輝く事はない。

二度と、あの“日常”は戻らない。

犯した罪の重さは、かけがえのないものを自ら消してしまった俺達を、決して赦しはしない。

この業から抗う事は赦されない。

ただただ、生きていくしかないのだ。

例え胸が空っぽのままだとしても、隣に 名前 が居なくても、俺達は笑い続ける。




笑う度に何かが確実に壊れていく音を、しっかりと聞きながら気付かぬ振りをして。













そうして俺達は、今日も“非日常”の中を生きていく。



end.