忍たま×ピクミン@


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※過去拍手作品
※ピクミン主…主?


《 善法寺 伊作 視点 》

今日、久しぶりに一人で薬草園に来た時の事だった。何時もは保健委員の誰かしらと来ているのだけど、今日は皆実習だったり補習だったりと都合がつかなくて、僕一人でやって来た。薬草園に着くと、僕は早速雑草を抜き始める。六年間も保健委員を務めていれば雑草を見分けるのはお手の物で、黙々と雑草を取り除いてく。
集中していたお陰であと僅かで終わりそうだなと考えていた時、僕は目の前にあった雑草を引っこ抜いた。何だか茎が赤いな、とその程度にしか思っていかなった雑草を抜けば、ズボッと重みのある音がした。中々重みがあるその雑草に、随分と根が張っていたのだなと感じて何となく目を向ける。
そしたら、目が合った。
………目が、合った?

「っ!? ぅわあぁああっ!?!!!?」

思わず、手を放し反射的に距離を取る。その雑草は僕が手を放したのにも関わらず、その場に独りでにつっ立っていた。足のような根っこ?でしっかりと。よく見れば足だけでなく腕や顔らしきものもあり、まるで人のような形をしていた。この時点で色々と混乱している僕は、更に有り得ない事に気付いた。
その雑草は、生きているのだ。
普通なら持ち得ない自我を持ち、独りでにその雑草は動き出した。テケテケと可愛らしい筈の歩き方も、今は未知への恐怖にしかならず僕は咄嗟に後退る。だんだんと僕に近付くその雑草から逃れる為に、僕は側にあった木へと飛び登った。その雑草は僕が居る木の真下へと辿り着くと、何故だかじっと此方を見つめ始めた。その視線に何だか居心地の悪さを感じて、僕は逃げるように近くの木へと飛び移る。すると、驚く事にその雑草までもが一緒に移動して来て、再び真下から僕を凝視してきた。偶然かもしれないと何度も同じように移動してみたが、結果は全て同じだった。

「(え……ど、どうしよう…?)」

あまりに奇妙な出来事にどう対処すべきなのか、全く思い浮かばない。そう考えている間も変わらずに僕を凝視してくる謎の生き物に、思わずたじろいでしまう。うーんと唸りながら謎の生き物を観察してみると、ふとある事に気付く。
そう言えば、この生き物は先程から一切危害を加えて来ない。
離れているからなのかなと、試しに警戒しながらその生き物の横に降りたってみた。するとやはり、こんな至近距離にいるにも関わらず、この生き物は一切動きを見せない。
ただじっと見つめてくるだけである。

「(……え、本当にどうしよう。)」

危害を加えてくるのであれば、それ相応の対処は取れる。だがこうして何の危害を加える様子もなく、ましてや、僕の気のせいでなければ懐かれているらしい生き物に、どう動けばいいのだろうか。

「………。」

とりあえず、膝を着いてその生き物と目線を合わせてみた。じーっと互いに見つめ合いながら、ただただ無意味に時間が過ぎていく。

「…って、何してんだろ僕。」

あまりに意味のない事に自身の頭を抱え掛けて、僕は深い溜め息を吐いた。そしてまるで話し掛けるように、その生き物に問いかけてみた。

「ねぇ、君は一体何なんだい?」
『ピクミーン?』
「!! 喋った!?」
『ミーン?』
「……あ、もしかして、鳴き声…?なの…?」
『???』

小さく首を傾げて呟けば、目の前の生き物も一緒になってコテンと首を傾げた。
…ちょっと可愛いとか思ってしまった僕は、おかしいのかな。
いやでも観察すればする程不思議な生き物ではあるけれど、何となく可愛くも見えなくもない…気がする。この生き物の大きさは僕の膝下くらい、例えるなら猫と同じような大きさ、かな。全身は赤くて、目はまん丸で大きくて、茎のような頭の先には葉っぱがついている。 その葉っぱをゆらゆらと揺らしながらじっと見つめてくる姿は、何だか可愛い。
…あれ、僕の感覚おかしくないよね?
だって移動しても後ろをちょこちょこ着いて来て、話し掛ければ鳴き声?で反応して、時折僕の様子を真似をしてくるんだよ?だんだん可愛く見えてくるのは仕方ないと思う………多分。
…何だかこの短い時間で、大分この生き物に毒されている気がする。

「………。」
『?ミーン?』

うん、やっぱり可愛いかも。
コテンと不思議そうに僕を見つめる生き物に、僕は小さく笑ってしまう。

「さて…どうしようかな…。」

この生き物をどうするべきか。
此処に置いていくにしても、この不思議な生態だ、山賊辺りが珍しがって売り飛ばすか、はたまた不気味がって殺してしまうか。運良く見つからずとも山里にでも降りてしまえば、結果は同じだろう。だからといって学園に連れて帰るにしても、こんな姿だ、当然警戒はするし、何処かの忍の生き物かもしれぬと怪しむ筈だ。そう考えれば、僕だってこの生き物の全てを知っている訳じゃないから、やはり疑心は残る。
でも、と僕は生き物を見つめる。

「(何だか放って置けないよなぁ。)」

情が移ってしまったと言えば、確かにそうだ。忍の卵とは言えもう六年生、本来ならそのようになる前に対処しなければならない。否、例え情が移ってしまったとしても、忍として割り切らなければいけない。
だけど、それでも。

「…一緒に来るかい?」
『ピックミーン!』

この小さくて不思議な生き物を、助けたいと思ってしまったから。

「それじゃあ、行こうか。」
『ミーン♪』

僕はこの不思議な生き物に手を差し伸べた。
…あーあ、皆に何て言われるかな。
特に留三郎には色々迷惑かけるかもしれないしなぁ。
うーん…暫くは内緒にしといた方がいいかな。
最近は特に、委員会が忙しそうだし。
うん、その方がいいかも。

「これから宜しくね。」
『ピクミーン!』




それは不思議な生き物との
秘密の生活の始まり