neta
▽2017/10/05(Thu)
夢を見る女とマーリンお兄さん(fgo )
(ぐだ子=藤丸立香)
長い、長い夢を見ている。
燃え盛る冬木から始まったこの夢。未だに覚める気配はない。
『前方に敵性サーヴァントを確認、先輩!』
『うん、……行こう!』
宝具と宝具のぶつかり合い。人間の力では到底敵わない、名だたる英霊たちの戦闘は、何度見ても慣れることはなく全身の毛穴が開くような、息が詰まるような感覚に陥る。
爆風が朱色の髪を巻き上げ、スカートはバサバサと音を立てていた。
目が眩むほどの光と、飛んでくる砂塵。それでも少女は目を閉じることも逸らすこともせず、その戦いを見詰めている。
当然だ。指示を出す少女が少しでも目を逸らせば彼らは敗れ、彼女に待つのは死以外の何でもない。そして、人理は燃え尽きてしまうのだから。
みょうじなまえはきつく拳を握った。身に纏っている白い制服は同じもの。しかし、目の前の揺らぎもせず立ち続ける人類最後の希望とは違い、なまえの体は半透明で実体を持たない。風を受けても髪の毛1本すら靡かず、尖った木の枝はその体をすり抜け彼方後方へと飛んでいく。
『キャスター!』
『ああ!まだ、これからだ……!!』
夢であって、夢ではない。
なまえの体はカルデアのコフィンで凍結されて眠り続けているが、48人目の候補生であった藤丸立香はグランドオーダーを受けサーヴァントとの戦闘中であり、なまえにとっては夢でも藤丸立香にとっては現実の出来事である。なまえは藤丸立香の"今"を夢として見ていた。
眠り続けるなまえに、これが自分の生み出した夢なのか、コフィンの外で起きている現実であるのか確かめることは不可能だ。しかし、魔術師の端くれとしての勘がただの夢ではないと訴えていた。
大して歴史もない魔術師の家庭に生まれたなまえはその家系通り至って凡庸、中の下程度の魔術師だが、この手の直感は信じるようにしている。コフィンに入る瞬間の、死ぬか生きるか、ここぞという時には働いてくれなかったが。
『アンサズ!』
ケルトの大英雄クー・フーリンが握るのは槍ではなく、ドルイドの杖。放たれた魔力の塊は炎を上げ、否応なしにあの冬木を連想させた。
ふるりと体を震わせ、唇を噛む。
脳裏に浮かぶは信頼していたレフに裏切られ、死んでしまったオルガマリー所長のあの顔だ。
「……立香ちゃんはすごいなぁ」
自分以外の候補生が凍結され残されたたった1人のマスター、多くの英雄達に助力を求め縁を繋ぎ、小さな体で沢山の生命を抱えている。そのプレッシャーはいったいどれほどたろうか。夢を見るだけのなまえには測ることも出来ない。
不安に、恐怖に潰されてもおかしくない。けれど、人理の為にそんな感情を押し殺して、にっこりと笑顔を貼り付け。
戦闘は激しさを増す一方だ。砂埃の向こう、戦うサーヴァント達の姿は影しか見えず、なまえは藤丸立香から数歩離れた場所で立ち尽くしている。
「あっ!」
藤丸立香の肩に乗っていたフォウがぴょん、と身軽に飛び降りた。風を受けながらもしっかり着地に成功し、『フォウ!』と鳴き声を上げた。砂を浴びて少しばかり汚れているものの、愛らしさは全く損なわれていない。
「フォ、フォウさん……そこは危ないんじゃ?」
声が聞こえないと分かっていたてもつい音に出してしまうのは仕方ないことだろう。ひょっとしたら返事が返ってくるのではなんて甘い考えは随分前に打ち砕かれているが、それでももしかしたら……なんて気持ちが0.01%くらいは含まれていた。
返事どころか視線ひとつも返って来なかったが、一際眩い光が辺りを覆ったためにそのことを気にする余裕は奪われてしまった。
「まっぶしい……!立香ちゃん!フォウさん!」
目を焼くほどの光に慌てて手を伸ばす。藤丸立香はなまえが一瞬目を瞑った際に何かを見たのか、光の発生源に向かって走り出した。
「ええっ!危ないって……!」
透ける指先は白い毛並みをすり抜け、触れることは叶わなかった。
けれどその瞬間、フォウは確かに振り向いてーー
『フォウ?』
ふたつの紫水晶が、私の姿を捉えたのだ。
***
マーリンはまだ未登場。終局終わらせるか、マーリンがカルデアに来てくれたら続くかもしれない。ピックアップだったのにマーリン来なくて頭が痛いです。ガチャは悪い文明。