ざらついた空のもと

ふと、考えるときがある。
私とあなたを隔てるものはなんだろう、と。
なぜ私はここにいて、彼らは戦っているのだろう。この馬鹿げた戦争はいつ終わるのだろう。あの頃語った夢の行方はどこに行ってしまったのだろう。
終わりの無い問を考えてはやめ、考えてはやめ。

気づけば読まれたら楽園送り≠ノされそうなものばかり書いていた。慌てて斜線を引く。
しかし本題よりも斜線が多い紙を見て、これはダメだな、と思った。見られたら困るので、ランプの燃料の足しにしといた。新しい便箋を使わなくては。

けれども、いざ真っ新な便箋を目の前にしても、もはや何を伝えたかったのかを忘れてしまった。気晴らしにギターを手に取っても、気を取り直してペンを握ろうと、弾きたいメロディはもう思い出せないし、書きたかったものも分からない。

窓に目をやると、慣れた景色、慣れた色、慣れた音。
灯りがぽつぽつと点る、もう暗い街を見下ろす。今頃戦地にいる幼なじみは何をしているのだろうか。少しばかり目を閉じて、彼らの表情を思い浮かべる。残念ながら私にははっきりとわからないし、想像力を働かせることしかできない。唯一共通なのは空だけ。向こうだと砂埃も舞ってろくに星も見えないんだろうな。ざらついた空はここでも同じだけど、星が見える点では幾分マシ。な、はず。

陽気な歌とアコーディオンの音が聞こえる。ここではもうすぐ酔っ払い達のお出ましだ。私もそろそろやめにしようかな。明日の朝は早いことだし。
そして、ペンがまた一回転。

(リリー・ヴェルナーの独白)

Eldian Rhapsody

top