私には、貴方の存在が、眩しすぎる。






―――江古田高校。

中途半端な時期にも関わらず、先日この学校に転校してきた私は、友達をすぐに作れるタイプの人間ではない。
転勤族な親の都合ですぐに転校してしまうという理由で、今まで特定の友達を作るということもなかった。
私自信の性格もあるだろうけど。言うなれば、暗い性格。
過去にイジメのようなことにあったことはあるが、すぐに転校してしまうから、どうってことはなかった。
地味に、地味に、と目立たないように普通に過ごしていれば、イジメに合うこともない。標的にされることもない。
そうやって過ごしてきた。
しかし、この歳になって親の転勤がほとんどなくなる状況になり、きっとこれが最後の転校になるだろうと、ここ江古田へと引っ越してきた。もう転校することもない。高校生活も約半分経っているというのに、今更。
このまま友達も作らずに過ごして高校生活を終えるんだろうと思っていた。

「なーに暗い顔してんの?名前ちゃん。」
「……黒羽くん。」
「んだよーその反応。」
「…別に。」

彼は同じクラスの黒羽快斗。
暗く地味に過ごそうとしている私の目の前に現れた、騒がしくて明るくてクラスの人気者。そう、私とは正反対の存在。
彼の幼馴染みらしい、同じクラスの中森さんと共に、私によく声をかけてくる。何故だかはわからないが。
私は彼らが苦手だ。

「そんな暗い顔してっと、幸せ逃げちまうぜ?」
「なにそれ」
「だーから、笑っとけってこと!」

そう言った彼は、私の前に手を差し出した。
何事かとその手を見ていると、彼のカウントと共に現れたのはピンクのバラ。
突然のことに呆然とする私を見て、彼は笑った。
私には眩しすぎるくらいの笑顔で。

苦手だと思った。その眩しさが。




それからしばらく。

地味に地味にと過ごそうとする私に対し、黒羽くんと中森さんのコンビに振り回されどんどん巻き込まれていく。

なんで。なんで。どうして。
理解ができなかった。なんでこんなに私に関わってくるのか。
今までだって、多少関わろうとする人はいたけれど、地味で面白みのない私にここまで関わろうとする人はいなかったのに。
意味が、わからない。


「名前ちゃん!一緒に帰ろうぜー」

放課後。
今日もまた、私に声をかけてくる黒羽くん。
中森さんは用事があるのかさっさと帰ってしまったというのに、彼はこうして、1人でも私に声をかけてくる。
何故?

「……んで、」
「ん?」
「なんで…?」
「名前ちゃん…?」
「なんで、私に…関わろうとするの?」

誰もいなくなった教室。
いるのは私と、目の前の黒羽くんだけ。
痺れを切らした私は、思いを口に出してしまった。

「なんでって…関わりたいから?」
「だから…!どうして、私なんかに…」
「名前ちゃん、」

少し取り乱す私の両肩に、彼の手が触れる。
普段の飄々とした彼からは見たこともな真剣な顔で、私を見ている。
なに、なんなの…?

「私なんかに、なんて、言うなよ。
オレは、青子もそうだと思うけど、名前ちゃんだから関わりたいって思ってる。
関わるってのも変だけど、つまり、仲良くなりたいってこと!」
「な、かよく…?」
「そ!」
「どうして…?」
「どうして、か。そうだな…」

少しだけ照れくさそうな顔をする黒羽くん。
表情がよく変わる人。初めて会った。こんな人。


「名前ちゃんのこと、可愛いなーって思ったから、かな?」

そういって笑った彼の表情に、心臓がどくんと鳴った。
なんていう表情をするんだ、彼は。

「な、に…それ、」
「あ、その顔、信じてない?」
「信じるとか、そういう問題じゃ…」
「んだよー」

少し拗ねたような顔をしたと思ったら、今度はいたずらっ子のような顔をして、私の顔を覗き込んだ。



「本気って言ったら、どうする?」



顔が熱くて、心臓が煩くて、今すぐ逃げ出してしまいたい。

こんな感情になったのは、初めてだった。






その笑顔は反則だから




fin.



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