「ブン太のぶぁーか!!!」

「うっせばーか!!!」




あたしとこいつの関係なんて所詮、

幼なじみで、腐れ縁で、

バカ言ってはしゃいだり
喧嘩したり、

男同士の友達みたいなもの。

そう、でしょ?






「ねぇ、ブン太ブン太!」
「んだよ名前」

いつも通りの学校。休み時間。
読んでいた雑誌を持って、同じテニス部の仁王と話していたブン太の元にはしゃぎながら寄っていく。

「これ見て!見てこの店!
新しく出来たケーキバイキングだって!」
「うおっマジか!!
ちょ、今日帰り行こうぜ!!」
「モチよー!
あー早くケーキ食べたいーっ」
「名前奢りな!」
「はぁ!?マジふざけんなって!
ブン太の奢りでしょ!!?」
「んなわけねーだろぃ!」

「相変わらず仲ええのお。お二人さん。
もういっそ付き合ったらどうぜよ?」
「「そんなわけないから!!」」

ブン太とのやり取りをずっと横で見ていた仁王が口を挟んできた。
ブン太とあたしが付き合うとか、ほんとに考えられない。
考えたこともないし、ずっと幼なじみやってるし、想像がつかない。


「あ、そうだ。はい、これ。」
「なにこれ?」
「隣のクラスの女の子から、丸井くんに渡してくださいって言われたお手紙?」
「はぁ?」
「モテモテやのぉ、丸井くん?」
「うっせ」

少しうざそうに仁王をあしらうブン太。
仁王はククッと口元をあげて笑っている。

あたしが女の子から受け取ったもの。
中身は知らないが、明らかにラブレターだろう。
ブン太はどうするんだろうか。

なかなか可愛い子だったし、ありだと思うんだけど、

でもなぁ…

…………でも、なんなんだろうあたし。

「ねぇねぇどうすんの?
これ絶対ラブレターだよね?
返事どうすんの?」
「どうすんのって言われても誰か知らねーしなぁ…」
「断るの?」
「…………んだよ、お前俺にどうしてほしいの?」
「……え?」

予想してなかった質問に戸惑った。
それに、すごく真剣な顔して聞いてくるんだもん。
あんまそんな顔、見ないから、さ、びっくりするよ。

ってか、
どうしてほしい、って…?
どういうこと…?

「な、なーにそれっ
なんであたしに聞くのかなっ?」
「気になるのかなーって思って?」
「そりゃ、気になるでしょー」
「なんで?」
「え…………?」

なん、で…?

いや、なんでって、なに?

心臓がうるさい。
なんで…?

顔が、見れない―――



「ば、か…じゃない?
なに言ってんのか、わかんないよ、
あ、ほら、休み時間終わるじゃん!
席戻るね。」

「…………。」


真剣な目、だった。

何故か、

見つめられて、
息が苦しくなった。

意味わかんない。

なんなの…………?









―――放課後

「ブーン、た……って、あれ?」

仲のいい友達と話したあと、ブン太といざケーキバイキングへ!と思って振り返ると、何故か教室にいなかった。

「あれれ、仁王、ブン太は?」
「さっき女子達が集団で連れてったぜよ。」
「…え?」
「あれじゃないかの?
さっき名前が渡しとった手紙の張本人。」
「…ふーん…。」

あれれ、なんか、もやもやするんだけど。
え、なんで?

あれか、ケーキ食べに行きたいのにいないからか。


「淋しいんか?」
「へ…っ?
な、なんでそんなことになるのさ!
ばっかじゃない仁王!」
「素直じゃないのぉ。
…丸井が、教室で待っとけって言ってたぜよ。」
「あたし…?」
「お前さん以外おらんぜよ。
俺は帰るから、ま、大人しくしときんしゃい。」
「……………うん。」


あたしの頭を撫でて帰っていく仁王が、微かに笑ったような気がした。




隣のクラスの女の子に連れていかれたって、やっぱ、返事とか、そういうことだよね…

ブン太、なんて返事するんだろう。


なんかすごく気になって、

すごく、もやもやして、

どうしようもなくて―――









「―――名前?」

後ろから聞こえた声。

今考えてた人物、張本人。


「…あ、どーだったの?ブン太。」

後ろを振り向かないまま、無理に明るく振る舞おうとした。
声が少し震えてる。


「………名前?」
「…な、なに?」

近づいてくる気配がする。

やだ、いま、
見られたくない。


ちょっと、

待って―――




肩を掴まれて、振り向かされる。

その途端、

何故か、

涙がこぼれた。


「なに、泣いてんだよ。」
「泣いて、ないよ?」
「泣いてんだろ。」
「ちが…、なんか、ブン太今日変だよ?」
「そんなことねーよ」
「そんなこと、あるよ!」

そんな顔、しないでよ。
なんだか、胸が、

苦しくなるんだよ。


「…で?呼び出されてたんでしょ?」
「………あぁ」
「なんて返事したの?」
「……どうだと思う?」
「な、なにその返し!」
「どう言ってほしいんだよ?」
「…なんで、そんなこと聞くの…?」

どう言ってほしいとか、意味、わかんないよ。
付き合うことになった、とか?
そう言われたら、
あたしはどうするんだろう?

目の奥が熱くて、
頭が回んなくて、

ブン太の顔が、

見れなくて――







「―――気になるからに決まってんだろぃ。」


「…え…?」


どういうことかわからなくて、
思わず顔を上げたら、

体が包まれる感覚


―――抱きしめられてる


なかなか理解ができなくて



「俺のこと変っていうけど、
名前も十分変だぜ?」
「な…っ」
「…なんでそんな、切なそうな顔して泣いてんだよ」
「………っ!」
「なぁ…なんでなんだよ?」
「そ、れは……」


なんで?

ブン太が、

あの子と付き合ってしまうと思ったから?

あまり一緒にいれなくなると思ったから…?

いなくなってしまうような

気がした…から…?




……あぁ、そうか。


いつからかわかんないけど、

多分、

ずっと前から―――



「俺さ、断ってるから。」
「…え…っ」
「お前以外、名前以外とか考えられねーから。」
「…っ…、」

「名前のこと、好きだから。」

「…っ…!…な、…え…っ?」

ブン太がなにを言ってるのかなかなか理解できなくて、でも、"好き"って言葉を聞いてどんどん体中が熱くなっていくのがわかる。
心臓がうるさいくらいドキドキしてる。
ブン太にも聞こえるんじゃないかってくらい。

「お前もさ、俺のこと好きだろぃ?」
「………っ!な、なんでそんな……」
「見りゃわかるって」
「…あたしも、ついさっきまで気づかなかったのに…?」
「どんだけ鈍いんだよ、ばーか」
「な…っ、ばかじゃないも…っ!」


あたしの些細な抵抗が止められた。

ブン太の顔が今まで見たことないくらい近くにある。

口が塞がれてる。


―――キスされてる。



「…っ…な、…ちょ…っ…え…っ」
「そんなに驚くかよ?」
「あ、あた、あたりまえでしょ…!」

「もう、奪っちゃったもんね」


そう言ってイタズラっぽく笑うから

あたしの心臓が爆発しそうなくらい高鳴って

また涙が出そうになるんだ。





その笑顔に、



いつからか、

心奪われていたんだ



fin.






back