甘い甘い、
俺を惑わせる媚薬。
全部受け取ってやるよ。
aphrodisiac chocolate
季節はバレンタイン―――
菓子好きの俺としてはもってこいなイベント。
「ま、丸井くん…!」
「ん…?」
見知らぬ女子に声をかけられる。
顔を赤らめて、手にしている包みを握りしめている。
今日だけで何回目だと、心の中で小さくため息をつく。
「あ、あの…私…、
丸井くんのこと、ずっと…好き、で、その、
受け取って、ほしいんだけど…」
「サンキュー。
チョコは嬉しいけど、俺、お前の気持ち受け取れねーから。」
「え…?」
「わりーな。」
どんなにチョコ持って来られても、やっぱり好きなやつ以外からの本命は受け取れないわけで。
義理は受け取るけどな。
教室に戻ろうと歩いていると、いつからいたのか、すぐ近くの角に立っていた、俺の好きなやつ。
「相変わらずモテるねーブン太。」
「名前。」
「立ち聞きする気は、全くなかったんだけど、なんか出るに出れなくて、その…」
「いいぜぃ、別に。なんか用だった?」
「ううん、特にはないけど…」
「……なぁ、次サボらねー?」
「…は?」
授業がめんどくさいのもあるけど、名前ともう少し2人でいたくて、手を掴み、教室とは逆の方向に歩き出した。
「ちょ、ブン太…!?」
「いいだろぃ?別に。」
連れてきたのは保健室。
今日は幸い、保健室の先生が会議かなんかで出かけていていない。
中を確認すると予想通り誰もいなかった。
名前を連れて中に入り、ベッドに向かいカーテンを閉めて座った。
途中から大人しく付いてきた名前も、ベッドに座った。
「…先生、いないんだね。」
「みてーだな。」
「……あの、ブン太。」
「ん?どうした?」
「なんで、保健室?」
「ゆっくりしたかったから?」
「……そ、か。」
何故か黙る名前。
名前の方を見てみると、少し戸惑ったようにそわそわしていた。
「どうかしたか?」
「いや、あの…その、」
「ん?」
「…っ…ちょ、チョコ!」
「は…?」
「ブン太に、渡そうと、思ってて、その…さっき、渡しそびれて…」
「俺に…?」
「う、うん…」
「今、持ってんの?」
「……うん。でもさっき、他の女の子の断ってたから…どうしようかと、思って…
って、本人に言ってもしょうがないのに何言ってんだろ私」
あはは、と困ったように笑う名前。
俺のためにチョコを用意してくれてたってことが嬉しくて、思わず肩を掴み見つめた。
「食いたい。」
「え…?」
「お前のチョコ、食いたい。」
「う…うん。……はい。」
そしてポケットから取り出され手渡されたチョコ。
キレイにラッピングされた箱。
包装をあけていくと、生チョコが入っていた。
「おー!うまそー!」
「ほ、ほんと?」
「おうよ!いっただっきまーす」
口に含むと、チョコが柔らかく溶けて、甘い味が広がった。
「ちょーうまい。名前サイコーだな!」
「よ、よかったー」
安心したように、へらっと笑う名前。
その笑顔にぐっときて、思わず抱きしめた。
「…っ…え、ブン太…?」
「なぁ、これって、さ…本命だったりとか、する?」
「…それは、その…あの…」
抱きしめている腕を緩めて至近距離で見つめる。
目の前には、顔を真っ赤にさせた名前。
やべぇ、理性飛びそう。
「俺さ、
名前のこと好き。」
「へ…っ!?」
「名前は、俺のこと好き?」
「…っ…」
真っ赤な顔で涙目になりながら、名前はこくりと頷いた。
かわいすぎだろぃ。
俺のなけなしの理性が飛び、そのまま名前をベッドに押し倒した。
「っ…ぶ、ブン太…!?」
「すげー好き。」
「…う…うん…私も、好き、だよ?」
「付き合お?」
「…うん…!」
そしてまた涙目になるから、そのまま唇をふさいだ。
「…ん…っ」
「甘ぇ。」
「ブン、た…!」
「なぁ、名前、」
「な…なに…?」
「シたい。」
「は、はぁ…!?」
「我慢できねぇ。」
「ちょ、ブン太…っ!」
チョコの甘さのせいなのか、
それとも、名前の甘さのせいなのか。
どうやらこの媚薬は、
サイコーな効き目らしい。
これから、
甘い甘いお前を
味わおうか。
fin.
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