ふわふわな羊みたいで、笑った顔はひまわりみたい。
寝てる君も、楽しそうに笑ってる君も、
眩しいくらいキラキラしてるの。
そんな君が、大好きです。
気候も暖かくなってきて、春だか初夏だかわからない中、世間はゴールデンウィークの終わりを迎えようとしている。時期的に、大会に向けて部活動が熱を入れ始める頃なので、休みにも関わらず部活はあるわけで。いつものように部活へ行き、マネージャー業務をこなす。
「おい、名前。」
毎度偉そうな雰囲気を醸し出しながら名前を呼んでくる跡部。だいたい言うことは決まってる。
「ジロー呼んでこい。」
―――芥川慈郎。氷帝学園3年。
いつも眠そうにしているが、実は氷帝の中でもトップレベルの実力を持っているボレーヤー。
しかししょっちゅう寝ているジローは、部活でもやる気スイッチが入るまでどこかで寝ているのが日常茶飯事。コート付近以外で寝ているときやどこにいるかわからないときに探しにいくのが私の仕事でもある。
全然苦痛ではないし、むしろ嬉しいと思ってしまうのは、彼に秘かに恋心を抱いているからなのだが。
それになんと言っても今日は、5月5日。
ジローの誕生日なのだ。
例に漏れず人気者な彼のファンの女の子達が、ご苦労なことで、学校が休みにも関わらずそわそわした様子でプレゼントを持ちながら、コートのフェンスの周りを囲んでいる。
探しに行くのはいいが、彼女達に着いてこられてもめんどくさいので、こっそりと抜け出し、とりあえず部室へと向かった。
レギュラー専用の広すぎる部室の扉を開けると、ソファの陰から覗く金色のふわふわのくせっ毛が目に入った。今日はすんなり見つかって一安心。たまに道端で寝ていることもあって中々ハードなのだ。
「ジロー?」
名前を呼んでみても反応はない。むしろこれで起きたら奇跡に近いが。
傍にいって覗いてみると、それはもう気持ちよさそうに眠っていた。いつも思うが、この天使のような寝顔をずっと見ていたい気持ちになる。しかし起こして連れていかないと跡部に怒られる。
「…あ。」
彼を起こそうと手を伸ばしたが、思い出したように手を止める。
そういえば。私もあのフェンスを囲んでいた彼女達と同じく、プレゼントを用意していた。
自分の鞄の方へ向かい、忍ばせてあったプレゼントを取り出しジローの元に戻る。
そして今度こそ彼を起こそうと肩を叩いた。
「おーいジロー。起きて!」
「……んん……?」
「じーろーくーん。起きて起きて、跡部呼んでるよ。」
「んー…名前…?」
「うん。そう。起きた?」
「…ん〜…起き…zzz」
「…もう!」
起きたと思ったジローはまた夢に引き戻されそうになっている。女顔負けのふにふにのほっぺを摘んで引っ張ってみる。相変わらず気持ちいいほどの柔らかさだな。
「ジロー!起きて!」
「んー…おひあ…しぃー」
ゆっくりと目を擦りながら起き上がるジロー。なんとも言えない可愛さに胸が高鳴る。寝ぼけ眼で私をぼーっと見つめるジロー。起きた?と問えば、ふにゃっとした顔で笑うもんだから、私の心拍数が上がる。反則だ。可愛すぎる。
「おはよ、ジロー」
「んーおはよー名前。」
「はい、これ。」
そう言って手にしていたプレゼントを差し出せば、ジローが驚いたかのように目をぱちくりさせた。
「なにこれ?」
「プレゼント。誕生日おめでとうジロー!」
そう言うと嬉しそうに、目を輝かせて私とプレゼントを交互に見るその姿が本当に愛らしい。
嬉しそうにプレゼントを開け、中から出てきた羊の形の枕を持って嬉しそうにはしゃいでいる。
「すっげー!かわE〜!」
「ジローたまに地べたでも寝てるから、痛くないのかなと思って。」
「あ!!ムースポッキーも入ってる!うれC〜!!」
「喜んでもらえてよかった。」
「うん、ありがとう!」
そう言ったジローはプレゼントを持ったまま、何を考えたのか私に抱きついてきた。
「ちょ、じ、ジロー…?!」
「すっげーうれC!ありがとな!」
「ど、どういたしまして…っ」
ジローが抱きついてくるのは初めてではないが、毎度動揺しすぎて硬直してしまう。ジローにとっては喜びを表現したただのスキンシップなんだろうが、好きな人に抱きつかれてドキドキしないわけもなくて。
「……ジロー?」
いつまでも離してくれないジローを呼べば、どうやら寝ているわけではないようで、んー?と返事が返ってきた。
「あの、離して…?」
「ヤダ」
「……え?いや、ヤダって…」
「離したくないC」
ジローは更にギュッと抱きついてきて、私の心臓は破裂しそうなほど高鳴っている。これは絶対に聞こえてるんじゃないかというほどに。
「じ、じろ…、」
「俺、名前のこと好き。」
「……へ?!」
「名前は俺のこと好き?」
「や、あの、ジロー…?」
少し離れたジローは私の顔を覗き込んでくる。
すごく嬉しそうな、意地悪そうな、無邪気な顔で笑っているジローは、きっと私の気持ちに気付いてる。
それで言わせようとしてくるジローは相当意地が悪いんじゃないかと思いつつも、ジローに弱い私は、真っ赤になっている顔を隠そうと俯きながらも口を開いた。
「じ、ジローが、好き。」
「名前かわE〜」
「な…っ」
驚いて顔を上げると、ジローの柔らかい唇が、私のほっぺに触れた。
「じ、じろ…!!」
「やわらかいね〜」
「…っ…!!」
恥ずかしすぎてまた目を逸らしそうになった瞬間、今度は唇にジローの唇が触れた。
突然のことに驚きすぎて硬直するも、恥ずかしさが一気にこみ上げてきて、顔が更に熱くなるのを感じた。
「あーもーすっげーかわE!」
すごく嬉しそうな顔をしたジローは、また私をきつく抱きしめた。
大好きな笑顔を独り占めしているような気分になって、くすぐったくて、でも嬉しくて、私もジローに抱きついた。
天使の笑顔
後ほど、コートにジローを連れて戻った…というか、手を繋いでジローに引っ張られる形で戻った私達は、ファンからすごい目で見られるわ、レギュラーには驚いたような、呆れたような、様々な顔されるわ、最終的に中々戻らなかったことを跡部に怒られたのは言うまでもない。
fin.
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