「あ!あの子可愛いなぁ♪」
……。
「お!あっちの子も…」
……………。
Blind Love
「名前、アンタ目が怖いわよ。」
「……そんなことないって。」
「今にも殺人しそうな勢いよ?
あんたのその顔、暗殺者もびっくりだわ。」
「うるさいわよ。」
私の横で私のパフェをばくばく食べながらふざけたこと言ってくる親友の雛。
今は放課後。二人で学校の近くのカフェにいる。
窓際の席で、お互いのパフェを食べあったり話したりしていると、窓の外に見覚えのあるオレンジ頭が見えた。
―――千石清純
不本意ながら、女ったらしなあの男は、私が想いをよせている相手だったりする。
あまりのたらしぶりに、自分はなんであいつを好きになったんだろうと思い、気がつくと、そういう場面に出くわすと睨んでしまうようになっていた。
またその癖が出ていたのだろう。
そんなことを考えながら千石を見ていると、千石がこちらを振り向いた。
目が合い、しまったと目をパフェの方に向けると、まだ半分以上残っていたパフェが半分以下にまで減っていた。
「あぁ!ちょ、どんだけ食べてんのよ!!」
「あんたが千石君ばっか見てるからでしょ?」
「は!?意味わかんな「や!お二人さん。」
「「…………は?」」
私の声を遮って聞こえてきた声。
二人同時に横を振り向くと、さっきまで外にいたはずのオレンジ頭―――千石清純が笑顔で立っていた。
「はっ!?ちょ…」
「何やってんの?千石君。」
「いや、さっき名前ちゃんと目が合ったからさ。」
「………ッ」
「ふーん。」
ふーんってあんた…。
そう思って、突然のことに動揺しながらも雛の方を向くと、ニヤっと笑って私を見た。
すごくムカつくわ、その顔。
「ちょ…雛?」
「あー私用事思い出したから帰るわ。」
「は!?」
「あ、ここにお金置いとくから。
名前また明日。またね、千石君。」
「って、雛!!?」
「うん。バイバーイ。」
笑顔で手振ってんじゃねぇよ…!
雛…明日シメてやる…
「名前ちゃん、ここ座っていい?」
「へ?あ…うん。どうぞ。」
雛のせいで千石と向かい合わせで座ることになってしまった…
なんか…緊張してきた。
「名前ちゃんさぁ、」
「な、何…?」
「よく俺のこと見てるよね。」
「へ!?」
ば…バレてる…!!
「よく目が合うなーって思ってたんだよね。」
「あ、はは…なんか、ごめん。」
「なんで謝るの?すっごく嬉しいよ。」
「へ…?」
嬉しいって…何が…?
「パフェ食べないの?アイス溶けてるけど。」
「え?……あ!」
私のパフェ…!!
慌てて残り少なくなったパフェを食べだした。
………視線が気になる。
目線を上にあげると、ニコニコ笑いながら私の食べる姿を見ていた。
「あ、の…何?」
「いやぁ、可愛いなぁと思って。」
「な…ッ!」
「こんなに可愛い名前ちゃんを目の前で見れるなんて、ラッキーだな♪」
またこの人は…そんな恥ずかしいことを普通に言ってくるから困る。
「千石は…さ、よくそういうこと言うよね。」
「そうかな…?
ホントのこと言ってるだけなんだけどね。」
そう言って苦笑い。
ずるいと…思う。そんな顔するのは。
「……………あ。」
「なんだか…曇ってきたね。雨降りそうな予感…?」
「帰った方が…いいかも。」
「そうだね。じゃあ送るよ。」
「…え!?」
送る、って………は!?
「いや、いいよ!その、悪いし!!」
「そんなことないよ!俺がそうしたいだけだし。
名前ちゃんともうちょっと一緒にいたいなぁって思ったんだけど…ダメかな?」
「……ッ!!」
心臓、もたないよ。
店を出て歩いた。私の横には千石。
ホントに私の家まで送ってくれるらしい。
なんかもう…緊張しすぎて死にそうだ。
なんでこんなことになったんだろう。
それにしても…
「あ、の…千石、」
「ん?何?」
「さっき、さ…嬉しいって言ってた、よね?」
「ん?…あぁ、うん。」
「その…どういう、」
どういう意味で言った?
いつものたらし?
それとも別の…他のこと…?
「さっきさ、よく目が合うって言ったよね?」
「…うん。」
「どうしてだと思う?」
「え?どうしてって…私が、よく見てる、から…じゃないの…?」
千石もそう言っていた。
だから、私がよく見てることに気付いてたって。
「うん。そうだね。でも、それだけじゃない。」
「それだけじゃ…ない?」
「うん。名前ちゃんが俺を見てただけなら、そんなに目が合わないでしょ?」
「…それって…あの、」
またその顔。少し困ったみたいな、笑顔。ずるい。
「俺も、名前ちゃんのことよく見てるんだよね。」
そうやって、また私の気持ちを掻き回す。
―――好き、だよ。
「あのね、嘘じゃないから、ホントのことだから、聞いてほしいんだ。」
千石の真剣な眼差しに捕らえられて、目が離せない。
心臓の音が煩い。
顔が熱くなって、頭がちゃんと働かない。
「俺、名前ちゃんのこと好きなんだ。」
ポツン…
熱くなった私の顔に、雨が落ちてきた。
それでもまだ、熱は冷めなくて。
「やば、降りだしちゃったね!そこの屋根の下で、雨宿りしよっか。行くよ!」
「へ…っ!?」
私は千石に手を引っ張られて、近くの建物の屋根になってる所まで走った。
掴まれてる手がまた、熱を帯びる。
ザー…と、本格的に雨が降り出し、私達も少し濡れてしまった。
「あーあ…濡れちゃったね。寒くない?大丈夫?」
「あ、の…千石、」
「ん?」
「千石って…さ、ずるいよね。」
「え?そう?」
「いっつもふざけたみたいに女の子ばっか見て鼻の下伸ばしたり声かけたりしてさ。」
千石はいつものように あはは… と困ったような顔をして笑った。
「でも…さ、そうかと思ったらいきなり真剣な顔したり、時々カッコよく見えて…さ。
私、すごく千石に振り回されてる。
千石が女の子見てる度にイライラして、そうかと思ったらいきなりカッコよくなったり…テニスしてる時とか…その、すごくカッコよく見えて…ね。」
「名前ちゃん…?」
ホントに―――
「私、千石が…好き。」
「…ッ!!」
私は、千石に抱きしめられた。
雨で少し冷たくなった体が暖かくなる。
「せ、んご…く…」
「…清純。」
「え…?」
「清純って、呼んでほしい。」
「き、よ…すみ…」
「うん。大好きだよ、名前。」
ずるい…ホントに。
こうやって私は、どんどん千石に…清純に溺れていく。
「ホントずるい…」
「そんなことないよ。
俺にとったら、名前の方がずるいと思うんだけど。」
「なんで?」
「よく怖い顔して俺のこと見てるなぁと思ったら、すぐ可愛い顔に戻ってるしね。」
「な…ッ」
「ははっ顔真っ赤だよ?」
「ッ知らない!!」
勢いよく降っていた雨が止んだ。通り雨だったらしい。
雲の隙間から太陽の光が少し差し込んで、濡れた道を照らした。
「せ…清、純。雨止んだよ?」
「うん。でも、まだこのままがいいな。」
「きよす……ッ」
唇を重ねられ、喋れなくなった。
何度も何度も。
私は、この男に溺れていく。
誰よりも大好きな君に。
fin.
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