彼を眺めるのが好き。

太陽に反射してキラキラと光るふわふわの銀髪も、笑った時に少し下がる眉も、大きな背中も、骨ばった手も、優しい雰囲気を纏った彼が、好き。


あ、また。
彼―――鳳くんは、よくテニス部の先輩と一緒にいる。青い帽子を被った先輩。
その先輩と話してるときの鳳くんはとても嬉しそうな顔をしている。
…いいな。私も彼とちゃんと喋れたらいいのに。
人見知りで引っ込み思案な私が、同じクラスとは言え、声をかけられるわけもなく。
言葉を交わしたことはほとんどない。私のことをもしかしたら知らないかもしれない。
こうしてコート周りのフェンスから覗いたり、教室から覗いたり。なんだかストーカーみたいだ。
あながち間違いじゃないかもしれないけれど。

突然。叫ぶ声が聞こえた。なに…?
目の前に飛んできた、何か。
反射で目を閉じしゃがみこんだ瞬間、ガシャンとフェンスが音を立てた。
その音の根源に目をやると、フェンスに挟まって止まっているテニスボールがあった。

「だ、大丈夫…?!」
「あ…はい、大丈夫で…、」

走ってきた焦るような声に向き返事をすると、目の前には鳳くん。言葉を失った。

「本当に大丈夫?怪我とかしてない?」
「だ、大丈夫、です…!」
「よかった…クラスメイトに怪我させるとこだったよ。本当にごめんね?」
「え…私のこと、知ってるの…?」

話したこと、ほとんどないのに。地味だし、目立たないのに、知ってくれているの…?
鳳くんはきょとんと大きな目をぱちくりさせた後、ふわっと笑った。

「苗字さん、でしょ?
ちゃんと知ってるよ、君のこと。
席がどこなのかも知ってるし、よく部活見に来てくれてるのも、知ってるよ。」
「そ、か…」

にこっと笑った鳳くんの笑顔が眩しくて、眩暈がしそうだった。
彼のこの笑顔が、好き。

「おい長太郎ー!」
「あ、呼ばれてるみたい、ごめんね」
「う、ううん、あ、ありがとう。」
「お礼をいうのは、こっちかな。ありがとう。
じゃあ、またね。」

そう言って、帽子の先輩に呼ばれた鳳くんはコートへと戻って行く。
大好きな後ろ姿で。



後ろ姿



その後ろ姿が、
ふたりの始まり。






fin.






back