貴方を見ると、胸がどうしようもなく苦しくなって。
それでもつい目で追ってしまって。
あぁ、これが恋だなって自覚してしまったら、
想いが止まらなくなってしまったのです。
私は、貴方のことが、好きです。
「あーもーなんなの日吉君かわいい日吉君かっこいい好きつらい」
「わかった。わかったから落ち着け。」
友人に日吉君への想いを語っているとダルそうに返された。
うう、酷い…こっちは真剣なんだよ?!
氷帝学園テニス部。部員が何百人もいるっていう、すごく大きい部活で、この学校で知らない人は多分いない。目立つし。
そのテニス部でレギュラーの人達は特に凄まじい人気があって、いつもいつも部活の時には女子がフェンスを囲み見学している。見学というか、むしろアイドルを見ているようなもんだけど。
元々そんなに興味がなかったのだけれど、同じクラスの鳳君がいるっていうのもあり、友達がレギュラーの先輩のファンっていうのもあって、テニス部を見に行く機会があった。
そこで私は、日吉君に目を奪われた。
雰囲気も、テニスらしくないあの構えも、よくわからないけれど、綺麗な動きに目がいった。
友人に聞くと、彼は同じ学年の日吉君というらしい。
それから私は、日吉君のことが気になり始めたのだ。
彼は普段クールな性格をしているようで、鳳君と話している所をたまに見かけるが、いつも爽やか笑顔な鳳君とは違い、今のところ笑顔を見たことがない。
彼はどんな風に笑うんだろう?
彼の笑顔が、見てみたい。
そう思った頃には既に、恋に落ちていたのだ。
「そんなに日吉君のこと気になるなら、鳳君に聞いたらいいんじゃない?」
「へ?!」
友人の言葉に動揺した。
いや、確かにそうなのかもしれないけれど。
鳳君話しやすいし、優しいし、きっと聞いたら答えてくれると思うけど。は、恥ずかしすぎない…?!
「いや、あの、でも、」
「あ、鳳くーん!」
「ちょ、ちょっと待てええええええ!!!!」
私の言葉を無視し、友人が教室に入ってきた鳳君を呼んだ。
「どうしたの?俺に用事?」
「名前が日吉君のこ…」
「なんでもない!なんでもないよ!ごめんね鳳君!」
「え?うん…ならいいんだけど。」
「おい、鳳。」
ふいに聞こえた、私でもなく友人でもない、鳳君を呼ぶ声。
その声は、まさしく、今の今まで話していた人物の声で。
ゆっくり振り返ると、少し不機嫌そうな、日吉君がいた。
「ん?日吉、どうかした?」
「さっきそこで榊先生にこれを鳳に渡せと言われたからな。
ったく、なんで俺がわざわざここまで来なきゃならないんだ。」
「ああ、わざわざありがとう、日吉。あ…」
……え。
鳳君がいつものその爽やかな笑顔でこちらを振り向いた。
「さっき日吉がなんとかって言ってなかったっけ?」
「ぇ、ええ?!」
「は?俺?」
「いやあの「そーなの!この子がね!日吉君と話してみたいって!」
ちょ、おい何言ってんだこいつ。何言ってくれちゃってるの…?!
てかそんなつもりない!ないから!!
「いや、だから、そんな、話したいなんてそんなことないよ何言ってんの話したいわけないじゃないそんな、恐れ多いわ!!!!」
「え?」
「名前落ち着いて…!」
「…なんなんだこいつ。」
あああ…やってしまった。
なんなんだって…そりゃ思うよね。
いきなり話したいわけじゃないとか恐れ多いとか言ってしまったし意味わかんないですよね…!
いやもうすでに自分でもよくわからないよ緊張しすぎて。
その時。
「ふっ…変な奴。」
少しだけ、日吉君が笑った。
それは、鳳君みたいな爽やかなものでなく、満面の笑顔だったわけでなく、むしろ鼻で笑ったんじゃないかと思うくらいのものだったけれども、それでも、初めて見た日吉君の微かな笑顔に、私の胸は大きく高鳴って、思わず笑みが溢れた。
「…えへへ」
「名前?」
「どうかした?」
「日吉君の笑ったとこ初めて見れた。」
ほとんど独り言のようにぼそっと呟いた言葉が聞こえたからか否か。
日吉君が少し目を見開きこっちを見た気がしたけれど、すぐに目を逸らすかのように教室から出て行こうとした。
「ひ、日吉君…?」
「…ほんと、変な奴。」
そう言って出ていった日吉君の耳がほんの少しだけ赤かった気がして、どういうことなんだろうと、ぼーっと日吉君が去っていった方を見つめた。
すると、鳳君が何か納得したかのように、笑った。
そしてこちらに笑顔で向き、日吉をよろしく、と言った。
――――後日、テニス部の見学に行く度に、
日吉君に声をかけられてからかわれるようになったのは、
また別のお話。
笑顔が見たい
「応援してるよ、日吉。」
「うるさい。」
(素直に言えばいいのにな…)
fin.
相互記念、きなか様へ。