「うっっっっみーーーーーー!!!!!!!」
やっぱ夏といえば海だよね!!!
「もう秋だろぃ。」
「煩いぞ苗字!!!」
「へいへーい」
今日は真田に怒鳴られたってなんともないよ!
だって!目の前には!海だもん!!
中学最後の夏休みは、部活部活部活の毎日、男子テニス部のマネージャー業をせっせとこなす日々、それもそれで青春!って感じだし部活は好きなんだけど、そのせいで他に特に何もすることもなく、夏らしいことをせずに夏休みが過ぎてしまった。
そう。ブンちゃんにつっこまれた通り、今はもう秋。
海に来るにはだいぶ涼しい気温である。
それでもどうしても海に行きたくて、ずっと駄々をこねてたら、
『部活終わりに皆で海へ行こうか』
って言った幸村くんが天使に思えた。いや、神。神の子だもの。ありがとう神様幸村様!!!!
白い砂浜!青い空!青い海!を満喫する予定が、最近はもう日が落ちるのが早くなってきて、すっかり夕陽が景色を真っ赤に色付けている。
これはこれで綺麗だからよし!と、とにかく海に来れるのが嬉しくて、私はその場で靴も靴下も脱いで目の前の海に駆けていく。ああ、青春って感じだね!!
砂浜に打ち寄せる波にひとりでキャッキャとしてるのはなんだかちょっと寂しいけど楽しい。楽しい。海最高。
「おい、名前」
「あれ?におくん。皆は?」
「お前さんがキャッキャしてる間に、先に向こうに行ってしまったなり。」
「えーひどいなー」
「よくひとりでそんなに遊べるのう。」
「なによー寂しい奴って言いたいわけ?」
「さぁて、どうかの?」
そう言って、私がさっき脱ぎ捨てた靴と靴下を渡してくれたにおくんは、ほら、行くぜよ。と言って背を向けて歩いていく。
その後ろ姿に、胸に甘い痛みが走る。それは、決して嫌なものではなくて、どこか心地よくて。
におくんの後ろの銀色のしっぽがふらふらとしていて、毎度のことながら飛びかかりたくなる衝動に駆られる。私は猫なんだろうか、なんて馬鹿みたいなことが頭を過ぎるが、飛びかかりはせずに、先を歩くにおくんを追いかけて横に並ぶ。
ふと後ろを振り返ると、真っ赤に染まった空と海が広がっている。
空の色を映した、海が。
「海ってさ、空が好きなのかな。」
「は…?どうしたんじゃ、急に。」
「だってね、海って、空と同じ色になるでしょ?
青空なら青い海、夕焼け空なら赤い海、夜空なら藍色の海。」
「そうやのう。」
「恋すると、その人に染まりたいっていうのがあるでしょ?
だからね、海は空が好きなのかなって。」
「…お前さんは相変わらず、不思議ちゃんやのう。」
「え、不思議ちゃん?」
「そんなこと言うやつ初めて見たぜよ。」
「……そう?」
不思議ちゃんって。初めて言われたんだけど。
少し笑ったにおくんの横顔が、眩しくて。
綺麗な銀髪が夕焼けに透けてキラキラとしていて。
また胸が高鳴る。
「なら、」
「え?」
「お前さんはどうなんじゃ?」
振り向いたにおくんと目が合う。
加速していく鼓動と、顔に集まる熱。
目の前のこの人が好きだなと自覚する、この感覚。
「…染まりたいって、思う、よ?」
「ほー。それはいいことを聞いたぜよ。」
「いいこと?」
「楽しみやのう。」
「え、なにが?」
そう言って不敵に笑うにおくんは、私のこの気持ちに気付いているんだろうか。お見通しなのかしら。
だとしたら、におくんはこの気持ちを、受け止めてくれるんだろうか。
におくんに染まりたい、なんて思ってしまう私を、許してくれるのだろうか。
突然立ち止まった私の方へ振り返るにおくん。
――また。トクンと高鳴る胸。ああ、好きだなと思う、感情。
ほら。そう言って差し出された手に、込み上げてくる嬉しさ。
私はその手を取った。
ちょっとゴツゴツとした、その手に。
またトキメキを覚えた。
私はもう既に、彼に染まってきているのかもしれない。
そんなことを思った、秋の始まり―――
この恋、きみ色
fin.
7万打&10周年企画
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