飛び交うボール、追いかける脚、首元に滴る汗、不敵な笑み…
「ああああああ丸井くうううううんんんん」
「煩いよ、名前。」
立海大附属中学、テニスコート。
今日もテニス部所属の男子生徒達が練習へ励み、それをサポートするのが私の仕事…
その仕事中に、コートを駆け回る私の大好きな人、丸井ブン太を見て、興奮を抑えることが出来ず発狂していると、いつから横にいたのか部長の幸村くんに止められた。
うっうっ…だって丸井くんが…かっこいい…
「声に出てるよ。煩くするなら向こうで仕事してくる?」
「あああ幸村様部長様ごめんなさいちゃんと仕事します!!!」
今は、丸井くんと切原くんの試合を見てスコアを付けている。さっきまで洗濯とかしてたけど、幸村くんが、「ブン太が試合するけど、スコア付けたい?」って言ってくれてダッシュでしに来たというのに…ぐっ…仕事はちゃんとしなきゃ…
試合が終わり、丸井くんがコートから出てくる!と思い私はダッシュでタオルとスポドリを持って、出てくる丸井くんへと駆け寄った。
「お疲れ様!丸井くん!」
「お、サンキュー名前!ちゃんと見てたか?」
「見てた!見てたよ!」
「ちょっとちょっと〜名前先輩、オレのこと忘れてないっスか?」
「あ、ごめんごめん赤也、はい、タオルとスポドリ。」
「雑!!丸井先輩との差がひどくないっスか!?」
「いつものことだろう。」
「でも柳先輩〜〜〜」
「名前はブン太のストーカーじゃからのぉ」
「ぎゃ!!もーやめてよ仁王くん!!」
さっきまで試合してた柳くんと仁王くんまでやってきていた。仁王くんは相変わらず私をからかって遊んでいるようで、後ろからのしかかってきた重さに驚いた。猫か。
「てかストーカーじゃないからね!?ほんとだよ!?」
「ほー?」
「ほんとだからね!?ただ丸井くんのことが、す、す…ってとにかく!ストーカーではないから!!」
「名前、ブン太が使っていた空のペットボトルがここにあるが…」
「いただきます!!!」
「…マジかよ」
丸井くんの使ってたペットボトル…丸井くんのあの唇が触れたペットボトル…!!自分で口付けたりとかそんなことはさすがにしないけど、丸井くんグッズの一つに加えさせていただきたい…!!
神様柳様…!いつもありがとうございます!!
丸井くん若干引いてる気もするけど!!!
「さ、さすがっすね…名前先輩…」
「ほんまに面白いやつじゃの」
「名前、ブン太のペットボトルはわかったから、仕事しなよ。取り上げるよ?」
「す、すみません!!!幸村様!!!!
えーと、次は丸井くん休憩で、切原くんと柳くんが試合で、仁王くんは真田くんと試合ね。」
「げっ」
「…だそうだ、赤也。行くぞ。」
「真田か……プリッ」
「いってらっしゃーい!」
「俺も様子見てくるから、ちゃんと仕事してなよ、名前。」
「はい!おまかせください!!」
敬礼して幸村くんを見送る。なんとかこのお宝ペットボトルは取り上げられなくて済みそう…よかった。ちゃんとジッ〇ロックにしまっておかないと…。
次の試合が終わるまでにまた諸々の準備と、スコアの確認と、あと…
「ん…?」
考え事をして意識が他所へと飛んでいたが、ふと気付けば目の前で丸井くんが私の顔をじっと見ていた。
顔がぶわわっと赤くなる感じがして、慌てて丸井くんへ声をかけた。
「な、な、なに?どうしたの丸井くん?」
「いや、名前ってさ、ほんとにオレのこと好きなのかなって思って。」
「え、な、な、え、え?」
「どうなんだよ?」
「え、いや、その…」
まさか丸井くんにそんなこと聞かれるなんて思ってもいなかったし、真面目に聞いてくる丸井くんがたまらなくかっこよくて、頭の中はパニックを起こしている。
「そ、その…す、すき、です…」
「………そっか。」
恥ずかしい…!!恥ずかしさに負けてぎゅうっと目を閉じていたが、丸井くんの表情を目に焼き付けねば、と、そろりと目を開ければ、ほんの少し照れたような顔をした丸井くんが目に映る。
な、な、、なんだその表情…!!!!!???
「ば…っ!そんな顔でこっち見んなって!!」
「だって、ま、丸井くん…!!」
照れた顔の丸井くんなんて滅多に見ること出来ないのに…!
というか、私が好きだなんて言ったからこんなお顔になったというの…!?
「…えへ、えへへへへ」
「んだよぃ…その笑い方。」
「丸井くん、」
「ん?」
「好きだよ。」
「……おう。」
「好き。」
「ん。」
「大好き。」
「…っ…なんだよさっきから!!」
「えへへ…」
丸井くんが好きで、大好きで。
テニス部マネしてるからって嫌味言わりたりとか、嫌がらせされたりしたこともあったけど、丸井くんがいたからこうしてやってこれた。
丸井くんがいつも助けてくれたから。
丸井くんがいてくれたから。
マネになったのはテニスが好きだからだけど、マネをしていくうちに丸井くんのファンになって、気がつけば丸井くんのことが大好きになって。
ほんとにほんとに、丸井くんのことが好きで。
「…やめろぃそれ、全部口に出てるから。」
「え。」
「お前、恥ずいって。マジで。」
「ご、ごめん丸井くん…!」
「ったく……」
丸井くんが私の肩を掴む。丸井くんの手が私の肩に触れてる…!とか、丸井くんのお顔がこんなに近くに…!とか、脳内がまたパニックになってきている私を他所に、丸井くんの距離が近づき、私の唇に丸井くんの唇が触れた。
近すぎる距離に丸井くんの綺麗な赤髪と、長くて綺麗な睫毛が映ってて、心臓がドクンドクンと音を速めて高鳴る。
触れた唇から微かにグリーンアップルの香りと、丸井くんの香りがして、胸がきゅんと苦しい。
丸井くんとちゅーしてる、とやっと理解した途端、顔に熱が一気に集まってきて、目をぎゅっと閉じればいつの間に出てたのか涙が少しだけ滲んだ。
どれくらい触れていたのかわからないけど、唇から熱が離れ、そっと目を開ければ、丸井くんが少し恥ずかしそうにはにかんでいて、こんな表情も初めて見たな、なんて思った。
「ま、るい…くん…」
「オレと付き合う?」
「ぅえ…!?」
丸井くんと付き合う…!?
どこにとかそういうベタな話じゃなくて…!?
私が、丸井くんと、付き合う…!!?
「わ、たし…丸井くんのストーカーみたいなんだけど…」
「いいんじゃね?それだけオレのこと好きってことだろぃ?」
「私と、丸井くんが…つ、付き合う…」
「…いや?」
「い、嫌じゃない嫌じゃない…!!
ただ、丸井くんはいいのかなって、思って…どうなのかなって…」
私はこんなに丸井くんのこと好きでも、一方的なら、付き合うだなんてそれは、なんだか申し訳なくて。
丸井くんのおでこが、こつんと私のおでこに当たった。
また近すぎる距離に少し引いてた熱がぶり返した。
「オレも、名前のことが好きっつったら?」
「えっ」
「…じゃなかったら、こういうことしねぇけど。」
「こ、こういうこと…?」
ちゅ、と音を立てるように、一瞬だけ唇が触れた。
「ま、丸井くん………」
「ん?」
目の前には、優しく微笑んだ丸井くんがいる。
私に向かって、微笑んでくれてる。
私は、丸井くんに思い切り抱きついた。
おわ、っと声を上げながらも私を抱きとめてくれる丸井くん。
「大好き!!!」
真田くんに怒られても、皆に冷やかされても、
繋がれた手がとても嬉しくて愛しい。
公認ストーカー
fin.
7万打&10周年企画
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