同じクラスの苗字は、特に目立つようなタイプでもなく、でも暗い性格というわけでもなく、とにかく笑顔がめっちゃかわいい。
何が言いたいかっていうと、苗字のことが好きやってこと。
でも中々話しかける勇気もない俺は、チキン野郎なんかもしれへん…

「あれ、一氏くん何してるん?」
「んあっ?!お、おう苗字か。今な、小春待ってんねん。」
「そうなんだ。
一氏くんって、ほんとに小春ちゃんのこと好きだね!」
「おう!小春のことめっちゃ好きやで!」
「そっかー…いいなぁ」
「え?」
「ううん、なんでもない。あ、小春ちゃん来たよ!またね!」
「お、おう」

そう言って走り去っていった苗字。
ほんの少しやけど喋れたことが嬉しくて感動する俺。
ほんまいつ見てもかわええな…なんて呑気に眺めていると、いつの間に横に来たのか、小春が俺の肩を叩いとった。

「ユウくん〜何してんの?あんた。」
「小春ぅ!苗字と喋れたで!」
「喋れたで!やないわ〜なんやねんさっきの!」
「え…なんかあったか?」
「あんたなぁ、何が『小春のことめっちゃ好きやで!』よ〜アホちゃう?」
「な、なんでや…!ほんまのことやで?!」
「あんなぁ、好きな子に他の子が好きやって大々的に宣言するやつがどこにおるの?」
「せやかて、小春はおと…ごふぅっ」

突然小春に殴り飛ばされた俺。なんで、なんでや…!

「もぉ〜ユウくんはほんまに乙女心がわからんのやからぁ。
名前ちゃんのあんな表情見たら…ああもう、ユウくんは女の敵やわ!」
「そ、そんな…!どないしょー小春!!」
「こうなったら…恋のときめき☆笑いできらめき♪大作戦!!を決行するしかないわ!」
「な、なんやその胡散臭いなま……ぐふぅっ!!!」

再び小春にぶっ飛ばされた俺は、小春のいうよくわからへん作戦を決行することになった。



―――次の日、
俺は小春に言われた通り、苗字のとこへ行った。

「ん?あ、おはよう一氏くん。」
「お、おん…」
「?どうしたの??」

俺は意を決して、

「担任の真似。」
「え?」

持ちネタを披露した。
突然のネタに呆然とする苗字。
周りからも注目をあび、ウケたようで、苗字を見ると、可愛い笑顔で笑っていた。
俺は嬉しくなって色んなネタを披露する。
気がつけばHRの時間になっていたのか、担任に止められた。
しゃーないから自分の席へ戻り、苗字の方へ視線を向けると、こちらを向いて笑っていた。
むっちゃ顔が緩んでる気がして、火照っていく顔を見られへんように背けた。



それからはなんだかバタバタとしていて、作戦を決行する余裕がないまま時間が過ぎ、昼休み、いつものように屋上で小春たちと一緒に飯食いながら、自然と作戦の話になった。

「ユウくんどないやったん〜?」
「おう、朝苗字笑かしたで!」
「ほんでほんで?」
「そんだけやな」
「えー!何してんのユウくん!」
「あ、あかんかった…?!」
「なんやなんや、なんの話?」
「聞いて〜や!ユウくんがな、昨日好きな子の前でやらかしてん」
「へー何してんユウジ。」
「何って…小春のこと好きやな!って言われたから、めっちゃ好きやで!って答えただけやで。」
「もぉ〜信じられへんわ〜!その時のあの子の表情がまた…」
「ほー、ようわからへんけど、ユウジがやらかしたんはなんとなくわかったで。」
「謙也にわかられるんはなんか複雑やな」
「なんやと?!」
「まぁまぁ。要は、向こうに勘違いさせてしまって、そんでその子がちょっとへこんでもたってことやろ?」
「さっすが〜蔵りんわかってるぅ〜!」
「勘違い…?なんであいつがへこむんや?」
「……こらあかんわ。」
「そうなのよ〜!だから作戦立ててん!」

どうなってるかようわからへんな…
謙也が、全然わからへんって言ってるのにめっちゃ共感してまうくらいわからへん…どうなってんねん…


「あ、一氏くん!」
「え…っ」

突然聞こえた声に驚いて振り向くと、今話題に出していた張本人がいて心臓止まりそうになった。
立ち上がり、コソコソと話しとる3人をほって、苗字の元へ行く。

「ど、どないしてん、苗字。」
「あ、ごめんねご飯中に。これ、先生から渡してって頼まれてん。」
「そうなんや。わざわざありがとうな。」
「ううん。あ、そういえば、なんで今朝私にネタ見せてくれたん?」
「えっ、いや…あれは」
「めっちゃおもしろかったけど」

そう言ってくすくすと笑う姿がめっちゃかわええ。

「あー…それは、な、」
「ん?」
「苗字の笑った顔が、見たかってん。」
「え…?」
「あ、いや…その」

なんて言ったらええんかがわからへん。
つい言ってしもたけど、ごっつ恥ずかしくなってきた。

「えっと…ありが、とう…?」
「お、おん」
「そんなこと言われたら、ちょっと、勘違いしそうだな…なんて」
「えっ?」
「ううん、なんでもない。小春ちゃんのとこ戻らんでええの?」
「お、おう…」
「じゃあ、私行くね。また後でね」

そう言って去っていく苗字をぼーっと見つめることしかでけへんくて、さっきの言葉はどういう意味やったんやろってぐるぐる考えていたら、背中ド突かれた。

「ってぇ…なんやねん」
「何やってんのユウくん!肝心なこと今言わんでどうするんよ〜!ええ感じやったのに!」
「え、でも」
「ユウジ、言うて来ぃや。」
「はよ追いかけぇや!」
「………っ」

俺は急いで、扉の方へ向かった。

扉を開けるとゆっくりと階段を降りていく苗字の姿を見つけた。

「苗字!」
「…っ…え、一氏くん…?」
「俺、俺……お前のこと好きやねん。」
「………っ、え、」
「せやから、苗字の笑った顔、見たかってん。
俺が、俺が苗字を笑わせたいねん。」
「で、でも一氏くん、小春ちゃんのこと好きなんじゃ…?」
「は?!」
「だって、昨日そう言ってたやん…!」

こ、このことかああああ!!!!!!
小春と白石が言うてたことをここに来てようやくわかった俺は、苗字の元へ駆け寄って手を掴んだ。

「確かに、小春のことは好きやけど、そういうんやなくて、その…」
「一氏くん…?」
「俺が、惚れてんのは、苗字やってこと…!わかったか!」
「う…うん…?」

俺の勢いに押されてか、苗字は動揺してるようやけど、掴んでるその手を引いて抱きしめた。

「え、あの…」
「ほんまに、好きやねん…」
「……うん。あのね?」
「…なんや」
「私も、一氏くんのこと好き。」
「………………………え、えええ?!!」
「えっ、え?!」
「な、なんやて…?!」
「えっと、その、だからね?一氏くんが小春ちゃんのこと好きなんやって思ったから、諦めて応援しようかなって…」
「あ、あかん…!」
「ひ、一氏くん…?」
「そんな応援せんでええねん!」
「わかった、よ…?」
「なんやそれ…焦るわ。あ、小春が言うてたんこれか…」


ほんとにほんとに、ようやく意味がわかった。
なんやねんほんま。俺アホみたいやないか。

「俺のこと、ほんまに好きなん?」
「うん…好き。」
「ほんなら…付き合う、ことになるん、か…?」
「そう、じゃない…かな…?」
「そ、か。」
「どうしたの…?」
「めっちゃかっこ悪いんやけど、この状況からどうしたらええんかわからへん…」
「えっと…どうしよう、かな…?私もわかんない…」

抱きしめていた手を緩めると、目が合って、苗字は顔が真っ赤になってて、めっちゃかわええ。
でも俺もきっと、同じかそれ以上に赤い気ぃする。
おでこくっつけて見つめ合っとると、苗字がはにかむように笑うから、理性がっちゅーか、なんかめっちゃキスしたくなって、少し顔を近づけていった、そのとき。
キスや!っていう聞き覚えのある声がどっからか聞こえて思わず苗字を少し離し、声のした方を振り向くと、さっき一緒におった3人とばっちり目が合った。

「何してんねんお前ら!」
「やべ!」
「惜しかったなーもうちょいやってんけどな」
「いや〜ん!ユウくん結構だ・い・た・ん〜!!」
「な…っ」

ひゅーひゅーという声も聞こえ振り返ると、階段の下でギャラリーが出来とって、俺らは注目の的。
こんな恥ずい状況に、苗字は更に顔を赤くした。

「あ、アホ!マヌケ!」
「お、おい…!」

なんて暴言を吐いて去っていく苗字。
苗字ってもしかして、めっちゃ恥ずかしがり屋か…?
フラれてるやん一氏!なんて冷やかしの声を聞きながらも、同じ気持ちなんやって知ってしまった俺は、もう怖いもんはない。

また笑かしたる。

恥ずかしそうな顔も可愛いけど、
やっぱ俺は、笑った顔が見たいんや。



恋のときめき笑いできらめき大作戦


それは、
笑いで心を鷲掴み、笑顔で恋を芽生えさせよう作戦。

笑かしたもん勝ち、やで。




fin.



5万打&8周年企画



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