残念ながらべた惚れ
「完二くん、ここ座って?」
「はいッス」
「あのね、キスしてもいいかな?」


屋上に連れてきてそう問えば、数秒固まったあと真っ赤になる完二くん。かわいい。
所謂私達は恋人同士で、手を繋いだりハグしたりはあるものの実はキスはまだだったりする。そろそろ、もう一歩くらい進んでもいいんじゃあないだろうか。


「キッ、キキキキキキ、キスって…」
「うん」
「魚のきす…」
「じゃなくてね」


思い切って、ずいっと顔を近付けてみれば、驚いた完二くんは目を丸くして後ろにのけ反る。が、後ろには何も無いのでそのまま倒れてしまった。
ゴッ、と鈍い音がした。




「あだだ…っ」

「ごめんごめん、大丈夫?」


頭を押さえる完二くんに手を差し出す。腫れてないだろうか、ちょっと申し訳ないことをしてしまった。
少し罪悪感を感じていると、捕まれた手に引っ張られてバランスを崩す。視界が急に回転して、気付いたら大きな腕の中にいた。


「…お返しッス」
「不意打ちとは卑怯だね完二くん」
「お互い様じゃないッスか」


くすくすと笑い、ぎゅっと抱きしめれば、完二くんも力は加減して抱きしめ返してくれた。屋上に誰もいなくてよかったかも。私は別にいいけどきっと完二くんはまた茹でタコのように真っ赤になるに違いない。でも完二くんにしては珍しく積極的だ。


「で、完二くん」
「はい?」
「キスしていいかな?」


再びそう聞けば、彼は黙ってしまった。
こうやってハグしたりするだけでも私は満足なんだけど、ハグだけじゃなくキスでも私の愛情を伝えたい。キスって、恋人同士で1番簡単で、深い愛情表現だと思うんだ。


「駄目かな」
「や、その…駄目じゃないんすけど…」
「うん?」
「……っす、するなら、俺からさせてください!!」


ガバッと上半身だけ起き上がり、真剣な顔でそう言われ、少しびっくりする。まだ顔は赤かった。
肯定の代わりにゆっくりと目を閉じる。きっと閉じた瞼の向こうでは完二くんが驚いてあたふたしているのだろう。しかし肩を掴まれ、何となく完二くんが近付いてくるのが分かった。きっと完二くん緊張してるんだろうな。私も、なんだかどきどきしてる。私と彼の距離が0になるまであと3秒、2、1、…0。

数秒くっついて、離れたあと目を開ければ、案の定完二くんは顔を真っ赤にしていた。あ、多分私の顔もきっと赤い。頬が熱くて、胸がいっぱいいっぱいで。
抱きついて、完二くん大好き!と今度は言葉で伝えれば、再び抱きしめ返してくれる彼が愛おしくてたまらない。顔をあげて、今度は私からお返しのキスをした。




残念ながらべた惚れ
(もっと君に愛を伝えたいのです)


::title/確かに恋だった
君を待つ間、空を見上げた。