空腹ランチタイム
「いつもパンなのか、お前」
そう私に声をかけてきたのは、春に都会の学校から八高に転校してきた、今は自称特別捜査隊の頼れるみんなのリーダー瀬多総司くんだった。
うん。と私が一言頷くと、なぜか彼はガーン!と漫画みたいに文字が浮かび上がりそうなぐらいにショックを受けていた。一体私の毎日のお昼ご飯がほぼパン(クリームパン率高し)とコーヒー牛乳であることに彼が何故そこまでショック受けるのか分からず首を傾げていると、ガシッと瀬多くんに肩を掴まれた。そしてそのまま引きずられるように教室を後に。千枝ちゃんや花村くんが不思議そうな目で、未だ状況判断できずハテナマーク飛ばしてる私と、無言の迫力というか威圧感がある瀬多くんを黙って見送った。いや、見てないで助けてほしい
連れて来られたのは屋上。私を座らせると何故か私の前に腕を組んで仁王立ちな瀬多くん、そして無言の圧力で渡されたお弁当箱。
食べていいの?と尋ねると無言のまま頷いたので、包みを解く。箱を開けると、とっても美味しそうなおかず達が所狭しと並んでいた。
ぐう〜、とお腹がなった。少しの間沈黙が流れる。恥ずかしい。私はそれに耐え切れず、照れ隠しのつもりで勢いよく卵焼きを取り口に突っ込んだ。途端にふんわりと甘い味が広がる。
美味しい。正直悔しいが私の作る卵焼きより全然美味しかった。いや、もしかしたら今まで私が食べてきた卵焼きの中で一番美味しいかもしれない。悔しい、だが美味しい。気づいたら私は夢中でお弁当を食べていた。それはもうがっつく勢いで。
正直一人暮らしで料理がまともに出来ない私にとっては久しぶりのちゃんとした昼食だった。瀬多くんはと言えば、私の隣に座って私の食べる様をただじーっと見ていた。
時々むせた私の背中を優しくさすってくれたりした。ああ彼ってお母さんみたい。
ごちそうさまでした、と手を合わせて弁当箱の蓋を閉じる。すると瀬多くんは水筒のお茶を差し出してきた。有り難く頂戴すると、なんとお茶ではなくお味噌汁だった。どこまで家庭的なんだ瀬多くん。
ずずっ、とお味噌汁を飲む。赤味噌の良い香りが鼻腔をくすぐった。そこで彼はようやく口を開いた。
「…美味かったか?」
「うん!」
勢い良く何度も頷くと、瀬多くんは数秒私を見た後、そうか…と照れ臭そうに頭を掻いた。そういえば彼はお昼どうしたのだろう。彼が持っていたお弁当はもう空でたった今私の体に消化吸収されている所だ。もしかして、私は彼の分まで食べて、しまったのだろうか。不安になって瀬多くんを見ると、私の言いたいことが分かったのかどこからか小さな包みを取り出した。中身はおにぎりだった。私にはお弁当で作った彼自身は握り飯だけなんて、なんだか申し訳ない気持ちが芽生えてきた。
とにかく、おにぎりを咀嚼している瀬多くんにありがとう、と感謝を述べ、お礼に何かしてほしいことは無いかと聞いてみた。このまま何もお礼せずにいるのは人としてどうだ。彼は咀嚼していたおにぎりを飲み込むと、数秒口元に手を添えて考える仕草をした後、こちらを見て口を開いた。
「じゃあ、これから毎日俺の作った弁当を食べてくれないか」
へ、と思わず間抜けな声が出る。彼はといえば"健康管理は大切だ"、とか"テレビの中での戦いのためにも力を付けてもらわないと"、とか言っていたが、最後に真剣な面持ちで"お前のことが心配なんだ"なんて言われたら断れないじゃあないですか。
空腹ランチタイム
「なんならお前の家に夕飯を作りに行っても…」
「それはちょっと遠慮しときます…」
「………そうか」
「(何故残念そうなのだろう…)」